決定戦にエントリーした貴金属4銘柄

 ここまで、足元の金(ゴールド)価格の動向や、市場の金利見通しなどについて、述べました。ここからは、金(ゴールド)をはじめとした「貴金属」を「長期投資」に利用する際の、留意点について述べます。

 個人投資家の皆さまが、現実的に投資できる貴金属といえば、金(ゴールド)、銀(シルバー)、白金(プラチナ)、パラジウムの四つです。これらの貴金属は、ETF(上場投資信託)、関連株、商品先物、CFDなどで売買をすれば、短期売買が可能ですが、ここでは短期売買ではなく、長期投資を前提にします。

「長期投資になじむ貴金属は上記4銘柄のうちどれか?」という問いへの、筆者なりの答えです。まずは四つの貴金属の特徴を確認します。以下は、四つの貴金属の需要の内訳です。

図:四つの貴金属の需要内訳(2021年)

出所:WGC、Silver Institute、Johnson Mattheyのデータより筆者作成

 一口に「貴金属」といっても、需要の内訳が異なることがわかります。最も右の「パラジウム」は、需要の90%以上が産業用です。パラジウムの場合、自動車排ガス浄化装置向けが全体の83%を占めます。その他の産業用は電子部品向け(同6%)などです。

 プラチナも産業用が多い傾向があります(全体の68%)。「触媒(一定条件下で、自分の性質を変えずに相手の性質を変えること)」の作用があるため、パラジウムと同様、「自動車排ガス浄化装置向け」が多いほか(同35%)、触媒作用を用いた石油精製施設における装置や、高温に耐え得る性質を用いたガラス加工の製造装置などに使われています。

 銀(シルバー)の産業用需要のメインは太陽光発電装置向けです(全体の10%超)。しばしば、「貴金属は宝飾品」というイメージが先行しがちですが、実際のところは、金(ゴールド)を除けば産業用がメインです。

 金(ゴールド)は宝飾が全体の55%、投資が同25%、その他(中央銀行の退蔵など)が11%強です。需要の内訳が異なることは、値動きに「強弱」をつける要因になります。