利下げ催促「市場」vs利上げ継続「FRB」

 足元、株式、コモディティ(商品)、債券、通貨など、幅広い市場において、金利動向(予測含め)が重要な変動要因になっているわけですが、FRBの高官たちは「インフレにしっかり向き合う」「金利の最高到達地点(ターミナルレート)の議論はまだ早い」など、利上げの温度感が低下するムードをけん制する発言をしています。

 しかし「市場」は、FRBに対して「利上げ打ち止め」さらには「利下げ」を催促するように、利上げの温度感低下が今後も進行することを予測しています。

 先週12日に発表された米国のCPI(消費者物価指数)が、事前予想や前回を下回る弱い内容だったことを受け、「インフレ鎮静化が本格化したのでは?」との思惑が広がったことも、催促の動きに拍車をかけていると言えます。

 以下は、CME(シカゴ先物取引所)が提供する「Fed Watch Tool」で示された、先物市場の動向をもとに算出された、今年2月から12月までの8回のFOMC(米連邦公開市場委員会)時点の、金利見通しの抜粋です。

図:2023年の各FOMC時点のFF金利見通し上位2位

出所:CME「Fed Watch Tool」のデータより筆者作成

 同ツールでは、各FOMC時点の金利水準が、どのような水準にあるか、例えば4.25~4.50%、4.50~4.75%、4.75~5.00%、5.00~5.25%などの、水準ごとに確率が示されています。その中で、最も確率が高いもの(1位)と、その次に高いもの(2位)を抜粋しました。

 1位をメインシナリオだとすると、「市場」(FRBではない)は、年央に「利上げ打ち止め」、年末に「利下げ」を予想していると、言えます(催促しているとも、言える)。

 2位をあえて示したのは、予想のボリュームゾーン(多数派。ここでは1位に2位を加えて同ゾーンを測っている)がどう変化するのかを、見るためです。

 グラフのとおり、年央は2位が1位よりも高い位置にあるため、「利上げ打ち止めとは、言いきれない」ムードがありますが、年後半は2位が1位よりも低い位置に移り、「利上げ打ち止め」を予想する向きが多数派になったと、解釈できそうです。

 実際、1月13日時点の、12月13日のFOMC時点の金利見通しの確率は、「4.50~4.75%」が32.7%で1位、「4.25~4.50%」が30.5%で2位でした(1位と2位、合わせて60%超)。

 足元、さまざまな価格は、「市場」の予測(催促)どおり、FRBが今年中に「利上げ打ち止め」、場合によっては「利下げ」を実施するかもしれない、という思惑が支配的になり、それに沿って、動いていると言えそうです。