ウクライナ危機、同危機起因の需給ひっ迫は続く

 ウクライナ危機は、以前の「逆さから見る民主主義 コモディティ価格はどう動く!?」で述べたとおり、長期化する可能性があると、筆者は考えています。

 同危機勃発をきっかけに、「西側」と「非西側(旧ソ連諸国+ロシアと隣接する一部のアジア諸国+産油・産ガス国+南米・アフリカの資源国などの、ウクライナ危機勃発を機に、「反西側」を共通認識として距離を近づけつつある国々)」の間にある「溝」が深まる一方で、国際連合が機能不全に陥っていることもあり、仲裁に入る第3国を探すことが困難なためです。

 同危機が継続すると、「買わない西側・出さないロシア」の構図も継続することになります。

 目下、EU(欧州連合)は、ロシアへの制裁の意味で、ロシア産のエネルギー(化石燃料)を買わない姿勢を鮮明にしています。以下のグラフのとおり、同危機が勃発した翌月以降、ロシア産のエネルギー輸入額は急減しています。代わりに米国を中心に、サウジや地中海の対岸にあるリビアなどからの輸入が増加しています。

図: EUの主要国からのエネルギー(石炭、石油、天然ガスなど)輸入額 単位:百万ユーロ

出所:EURO STATのデータより筆者作成

 しばしば「玉突き的な需給ひっ迫」という言葉を耳にします。これは、「買わない」姿勢を強める欧州でエネルギーの需給ひっ迫が起き、それを支援するために主要なエネルギー生産国が欧州向けの輸出を増やし、その結果、もともとこれらの主要なエネルギー生産国から輸入していた国々で、需給ひっ迫が発生する様子を示す言葉です。

 同危機起因で発生している欧州におけるエネルギーの需給ひっ迫は、世界全体のエネルギー需給をひっ迫させているわけです。危機が長期化すれば、世界全体のエネルギーの需給ひっ迫も長期化する可能性があります(2023年を含めた長期にわたる原油相場の上昇圧力に)。