OPECは消費国の「依存心」を利用し価格つり上げ
以下のグラフの通り、OPECプラス(サウジやイラクなどのOPEC(石油輸出国機構)加盟国13カ国と、ロシア、カザフスタンなどの非加盟国10カ国の合計23カ国で構成)の原油生産量の推移と、生産量の上限および減産基準量です。20カ国が、生産量の上限を設定した「減産」を実施しています。
図:減産に参加するOPECプラス20カ国の原油生産量など 単位:百万バレル/日量
「200万バレルの減産」を実施しているOPECプラスですが、上図のとおり、現在の生産量の上限を大きく下回る生産を行っています。世界の半分強の原油を生産するOPECプラスが積極的に生産量の削減を実施しているのは、なぜでしょうか。
積極的に減産を実施する理由については、表向きは「世界の景気減速を受けて減少する原油需要に見合う生産をするため」といわれています。筆者はこの点の他に、「主要産油国の財政均衡のため」という理由もあると、考えています。
図:主要産油国の収支が均衡する時の原油価格(IMF予測2021・2022年の平均) 単位:ドル/バレル
上図のとおり、IMF(国際通貨基金)はサウジ、イラク、オマーン、クウェート、UAEにおける、財政収支が均衡するときの原油価格を「70ドル前後」と予測しています(5カ国平均でおよそ67ドル)。
原油価格がこの水準を割り込むと、これらの国の財政収支が悪化し、国力が低下しかねません。彼らは、国力低下を回避するために、減産に励み、需給を引き締め、原油価格をつりあげようとしていると、考えられます。
今月(12月)上旬、WTI原油先物価格は、70ドルを割り込みそうになりました(期近ベース)。こうした原油相場の動きに、彼らは強い危機感を覚えたことでしょう。12月4日、200万バレルの減産維持でOPECプラスは合意。原油価格はほどなくして反発し、80ドル台に回復しました。
消費国の「依存心」という視点
多くの分野で言えることですが、依存心の強い人(依存者)から対象物を取り上げようとすると、その依存者は「高値でもいいから売ってくれ」という気持ちになるでしょう。
この「高値でもいいから売ってくれ」という心情が、どこか化石燃料の消費国の間で底流しているように感じられてなりません。
例えば、ファストフード店に行き、冷たい飲み物を購入すると、ストローは紙製に代わった(脱炭素実施)ものの、カップとフタは化石燃料由来のプラスチック製のままです。
こうした消費国の「徹底しきれていない脱炭素」を見て、産油国は「まだまだ自分たち(産油国)への依存を断ち切れてない」、だから「減産のアナウンス効果は持続する」などと、ほくそ笑んでいることでしょう。
減産のアナウンス効果は、われわれ消費国の化石燃料を取り上げられたくないという「依存心」が創り出しているのかもしれません。そう考えれば、われわれ消費国の化石燃料への依存心が、原油価格を高止まりさせる一因になっていると、言えるかもしれません。そして産油国は巧みに消費国の依存心を操り、原油価格を高値で推移させていると言えるでしょう。
2023年の原油相場の動向について、筆者の考えを述べました。お役に立てば、幸いです。
[参考]エネルギー関連の具体的な投資商品例
国内株式
国内ETF・ETN
NNドバイ原油先物ブル
NF原油インデックス連動型上場
WTI原油価格連動型上場投信
NNドバイ原油先物ベア
外国株式
エクソン・モービル
シェブロン
オクシデンタル・ペトロリアム
海外ETF
iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF
エネルギー・セレクト・セクター SPDR ファンド
グローバルX MLP
グローバルX URANIUM
グローバルX 自動運転&EV ETF
ヴァンエック・ウラン原子力エネルギーETF
投資信託
UBS原油先物ファンド
米国エネルギー・ハイインカム・ファンド
シェール関連株オープン