2023年におけるS&P500の上値余地は?

 前述した通り、来年は景気の減速がより明確になってくる可能性が高いと思われますが、年前半に利上げが終われば、市場は次に利下げを織り込み始めると考えられます。実際に債券市場では長期債金利にも短期債金利にもすでにピークアウト感がみられます。

 図表3は、シカゴ連邦準備銀行が算出している「金融環境指数」(Financial Conditions Index)と株価(S&P500)の推移を示したものです。金融環境指数は、米国全体を取り巻く金融環境の引き締まり度合いを示します。

 インフレや債券金利のピークアウト感、社債市場の信用スプレッド縮小などを反映し、金融環境指数は10月中旬から低下(金融環境が改善)し始め、株式底入れの下支え要因となっているようにみえます。

<図表3>金融環境の改善期待で株価は底入れか

(出所)Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2018年初~2022年12月14日)

 一方、FRBの大幅な利上げが続いてきたことで、米国経済が景気後退(リセッション)入りするとの見方も有力です。現時点で民間エコノミストが平均的に見込んでいる「1年以内に米国経済が景気後退入りする確率(Recession Probability Forecast in 1 year)」は、昨年末時点での15%から45%上昇して60%となっています(Bloomberg集計による市場予想平均)。

 NBER(全米経済研究所)が事後的に正式判定するような厳しい景気後退に陥るか否かを判断するのはいまだ時期尚早と思われますが、減速する景気についてボトム(底)が見えてくれば、市場の目線は景気回復に注目が移り、先読み(Forward Looking)する特性のある株式の目線がいち早く切り上がる可能性もあります。

 今後の米国株式は、「利上げ打ち止め期待」と「景気後退不安」が交錯しやすい状況で、ボラティリティ(変動性)が高まる局面も想定されますが、S&P500は2023年末にかけて4,600から4,800ポイント程度に上昇していく余地がありそうです。来年は相場格言でもある「不景気の株高」が示現すると見込んでいます。

 株価が下落する場面では、引き続き「押し目買い」や「積み増し買い」を実践し、長期目線を重視する投資戦略を意識していきたいと思います。

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