単収伸び鈍化、肥料の供給減は食料危機要因に

 この半世紀、人類は人口増加に対応すべく、技術革新と化学肥料の使用により、単収(生産効率)を上げきました。

 収穫面積を増やしにくい中で、いかに生産量を増やすかに腐心してきたわけですが、実はこの10年間、単収の伸びに陰りが見えつつあります。

 以下のグラフは、2000年から2010年まで、2010年から2020年までの、それぞれの単収の増加幅を示しています。トウモロコシ、米、小麦、いずれも増加幅が縮小していることが分かります。

 このデータは、技術革新に頭打ち感が出始めていることや、今、化学肥料の供給が途絶した場合、世界中で世界3大穀物の生産量が急減する可能性を示唆しているといえます。では、どのような国が化学肥料供給の担い手なのでしょうか。

図:世界3大穀物の単収増減の変化 単位:トン/エーカー

出所:FAO(国連食糧農業機関)のデータをもとに筆者作成

 化学肥料供給のおよそ28%は、「非西側」の急先鋒と言える、「ロシア」、ロシアの隣国で旧ソ連諸国の一つである「ベラルーシ」、そして中国です。(2020年 金額ベース)

 各種報道によると、西側に経済制裁を科されているロシアとベラルーシは、化学肥料の輸出を大幅に減らして出し渋りをし、中国は事実上の輸出規制を行っているとのことです。

 また、化学肥料が使えなくなった場合、世界の農産物生産量は4割減少するという試算があるとのことです。

「単収」が頭打ちである状態で、化学肥料の3割弱の供給を担う非西側3カ国が出し渋りをしている...。事態は深刻であると言わざるをえません。

 当該3カ国は化学肥料をどこに輸出しているのでしょうか。以下の図のとおり、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、インド、中国、タイ、ベトナム、米国、ウクライナ、オーストラリアなど、名だたる農産物生産国たちです。

図:化学肥料の輸出国とロシア、中国、ベラルーシからの輸入国(金額ベース)(2020年)

出所:OEC(The Observatory of Economic Complexity)のデータをもとに筆者作成