高止まりを支えるのは「ウクライナ危機」
以前の「カタールW杯に透ける世界分断、金相場はどう動く!?」で述べたとおり、ウクライナ危機は、さまざまな非西側諸国(旧ソ連諸国、ロシアに隣接するアジア諸国、産油国、南米・アフリカの資源国)による、化石燃料の使用を否定する「脱炭素」や、独裁国家の立ち位置を低下させる「人権重視」などの「西側」が推進する考えに反発する動きを共鳴させ、彼らを結束させるきっかけになっていると考えられます。
同危機は、西側と非西側の「思想の対立」の上に存在すると言えます。
国連の機能不全が叫ばれて久しく、世界規模の分断を仲裁できる第三者を発見することが難しい状態はしばらく続く可能性があります。「同危機は2023年も続く」というのが筆者の現時点の考えです。
以下の通り、2022年2月に勃発した同危機は、さまざまな経路で食料の需給や価格動向に影響を与えています。各種農産物相場は、同時多発する同危機起因の上昇圧力にさらされているわけです。
図:ウクライナ危機を起点に考える農業を取り巻く環境
同危機は、世界の「分断」が深めたり、西側の「脱炭素」が加速させたりしています。
それらの影響により、「自由貿易のムード停滞(囲い込み・出し渋り・輸出させずが横行)」、「植物由来の原材料需要増加(西側でバイオプラスチック・燃料などの需要増加)」、「化学肥料の供給減少による単収低下懸念(脱炭素と出し渋り起因の同肥料供給減少懸念)」が、同時発生し、食糧不足懸念と食料価格高騰観測が浮上しています。
ウクライナ危機が継続すれば、こうした懸念・観測も継続すると考えられます。次より「化学肥料の供給減少による単収低下懸念」について述べます。