コストの低下は主に「インデックスファンド界」で進んできた

 前回から結構難しいことを話してるよね。でももう少しだけ、さらに難しい話になってしまうんだけど付き合ってほしい。今日話してる信託報酬の多寡、高いか低いかについては、シンプルに言えば「仮に投資対象がまったく同じなら、信託報酬は低い方がその分だけお得」っていうのが結論になる。

 でも「投資対象がまったく同じなら」ってことはあまりなくて、あるとすればインデックスファンドの間でくらい。インデックスファンドというのは、日経平均や米国のS&P500など、世の中にある株価指数などと日々同じ動きをするように設計・運用されたタイプの投信のカテゴリー名です。

 例えば日経平均のインデックスファンドなら、どの運用会社のも目的はいっしょ、つまり今日の日経平均と同じ率だけ動くように運用することなので、さっき言った「投資対象が同じなら」に該当するわけだ。ということは「引き算」される信託報酬率が低いインデックスファンドを選ぶのが賢いよね。

 ところが、インデックスファンドの世界では既に信託報酬の低下がかなり進んでいて、信託報酬が低いほどリターンが高いといった単純な話にならないほど。信託報酬の差よりも、対象指数に連動させる技術で差がついてしまう方が可能性としては大きいくらい。

 つまりインデックスファンド、とりわけつみたてNISAで選べるようなインデックスファンドのコストはみんな合格点なので、神経質にならないでいいと思う。しつこいけどそれより何倍も大事なのが、自分は何にどんなリターンを期待して投資しようとしているのか――。リターンのことを考えるエネルギーの方だ。

コストで「乗り換え」はアリ?

 前に、僕の20年の実績、あの時に「日本株でなければ・・・」なんて後悔話をしたと思うけど、同じこと。僕はあの時、一番身近な自社ファンドの、一番売れているものにしてしまった。お世辞にも将来に思いをはせて深く考えたとは言えない。

 僕が君たちに今、避けてほしいと思うのは、「よっしゃ。最初はインデックスファンドがいいって聞くし、これが人気みたいだから〇〇インデックスファンドで決まりだな!」と安易に決めたり、「コストが大事なんだから信託報酬の最安ファンドを探さなきゃ」とそこだけに血道をあげたり、結果としてそのうち「あ、もっと低い信託報酬のが出てきたぞ!乗り換えなきゃ」なんてなったりすること。

「乗り換え」っていうのは、持っているものを売って、そのお金で次のものを買うことなんだけど、結構落とし穴がある。売ったものに利益が出ていたら、その約2割に税金がかかるとか、売ったものが現金になるまでに4日も5日もかかったりする。そして次のものを買うにも、申込日の翌日の基準価額になるのも多い。

 つまり、乗り換え作業の間には結構なラグが生じる。そうした数日の間にも当然株式市場は動いているから、新しいものを買う前に収益機会を逃してしまうかもしれない。僕が20年以上前に読んだ本の有名な言葉に、「稲妻が光る瞬間に市場にいないのは長期投資家にとっての極めて大きなリスクだ」というのがあるんだけど、うちの会社も以前から「THINK BIG, Stay Invested」って言い続けてるんだ。「細かいこと考えず大きく考え、投資をずっと続けていようね」って意味かな。

<父から娘への黄金ルール、「フルバージョン」はこちら>