コスパは「パ」があってこそ

 2人もそうかもしれないが、最近はとにかくコスト意識が高まっている。投信の手数料も低いに越したことはないだろうと。ところで、結構誤解されているのが信託報酬の「取られ方」で、別途どこかで取られている、あるいは証券会社に支払う口座管理料みたいに思っているようなネットの書き込みをたまに目にする。

 でもそうではない。さっきの絵の通り信託報酬は基準価額の算出過程で毎日少しずつ引かれている。その日の時価である資産総額を出した後、それに「信託報酬分の1日分」を掛け算した金額を先に投信の外に出してしまう。そしてその後に総口数で割り算して基準価額を算出してるんだからね。

 つまり毎日発表される基準価額は、すでにその日1日分の信託報酬が引かれた後なわけだ。基準価額を見れば保有投信のその日の評価損益がわかるわけだけど、それはすでに「コスト控除後」の損益ってことだね。

 別の言い方をすれば、毎日の基準価額というのは、信託報酬の1日分だけ毎日ちょっとずつ下げられて発表されているわけだ。信託報酬率が低いということは、その「下げられ方」が小さいということだから確かにいいよね。でも「投資成果の大勢」を決めるのは、そっちではない。

 当たり前だけど、投資の成果というのは「基準価額そのものがどれだけ上がるかによってこそ」決まる。コストが低ければ低いほど、自動的に良い結果が導かれるわけではないのが難しいところだ。

 いくら信託報酬率が業界最安でも、基準価額そのものの上がる力が結果的に乏しかった場合、その低さが意味を持てない。上がってくれてはじめてコスト差が意味を持つ。AとBという投信があって、その上がる力がまったく同じだった時に、Aの信託報酬率がBより低ければその差分だけAが少し得だったね――という話でしかない。このリターンとコストの主従関係を理解していないと、投信選びを間違えることになると思う。

 僕が勤めている運用会社では数年前から、「コストより、リターンから考える投信選び」っていう考え方を提唱してる。コストコストと目を三角にして、肝心のリターンのこと、つまり投資対象選びをおざなりにしては主客転倒だよと。投信を選ぶ際の順序として間違えないで欲しい大事なポイントだと思っているんだ。