非化石エネ利用・開発でウラン・EVも注目

 ここからは、「米国石油業界の活性化」と並ぶ、本レポートの重要テーマ「非化石燃料利用・開発 加速」について書きます。以下は主要5カ国のウラン生産量の推移です。

図:ウランの生産量(上位5カ国) 単位:トンウラン

出所:World Nuclear Association のデータをもとに筆者作成

 2011年から昨年ごろまで、東日本大震災起因の原発事故発生(2011年3月)をきっかけに、日本、ドイツなどで原発の稼働を停止する議論が進んできました。こうした流れを受けてか、原子力発電の燃料となるウランの生産量は2015年ごろから減少し始めました。

 しかし、今年2月にウクライナ危機が勃発したことで、ロシアに有利にならないようにするため(ロシア制裁徹底)、従来からの流れである「脱炭素」をさらに強化するため、化石燃料を使わないようにする「脱ロシア」のムードが一気に強まりました。

 ロシア制裁徹底はEU諸国のエネルギーの需給ひっ迫の一因となっており、制裁を徹底しつつ、ひっ迫を解消させるための方策が練られていました。EU諸国以外でも、世界的なエネルギー価格高を受け、電力価格が高騰していました。こうした背景を経て「原子力発電への回帰」が欧米日などで、進み始めました。

 日本では従来型の原発を、高度な技術を使い、安全性を高めた「革新軽水炉」に改良して利用することが検討されはじめました。また、欧米では「小型モジュール炉」とよばれる、出力が従来型のおよそ3分の1程度の小型で比較的扱いやすい原子力発電施設が、政府の後押しもあり、実用化を迎えつつあります。

「小型モジュール炉」は、事故時に自然に冷える仕組みを備えている(安全性あり)、あらかじめ工場で部品を製造して現地で組み立てる(建設効率よい)、従来の大型炉に比べて建設できる地域が広い(工場など立地に柔軟性あり)、などの特徴があると、されています。

 また、再生可能エネルギーの出力が弱まりやすいタイミング(夜間や、風や波がなぎのタイミングなど)を補う重要な発電施設になり得るとの声もあります。バイデン政権は、今年の夏、ウクライナの隣国であるルーマニアに「小型モジュール炉」の設置を支援すると表明しています。

「小型モジュール炉」の開発・利用が進めば、燃料である「ウラン」の需要が高まる可能性があります。そうなれば、減少傾向にあった生産量は増加に転じ、それにより、ウランを採掘したり原発のインフラを整備したりする企業に、ビジネス上の追い風が吹く可能性があります。

 こうした発電所で作られた電力が広く使われるようになれば(相対的に化石燃料を燃やして作られた電力の量が減れば)、EV(電気自動車)の流通に拍車がかかる可能性があります。走行時に温室効果ガスを排出せずとも、発電時に同ガスを排出している機会が多いことが、EVの問題点として指摘されていますが、この問題への解決策の一つとなるためです。