外部要因2:荒れる中国情勢

 そして、二つ目の外部要因は中国情勢です。

 最近の中国では、新型コロナウイルスへの対策をめぐり、国内外の各地で大規模な抗議活動が頻発していることが市場の注目を集めています。

 とりわけ、米アップル社(AAPL)が製品の製造を委託している台湾企業の中国工場(河南省鄭州)での混乱は、海外でも大きく報じられ、実際にiPhoneの出荷に影響が出始め、アップル株が大きく下落する場面がありました。

(図6)米アップル(日足)とMACDの動き (2022年12月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 先週のアップル株価は140~150ドルの範囲内での推移となりましたが、アップル株はその時価総額の大きさから多くの投資家が保有していることもあり、同社株がさらに下落した場合に相場全体へ与える影響には注意が必要です。

 さらに、中国の混乱自体も同国の経済活動のブレーキとなるほか、中には政治的な内容の抗議活動も行われているようですので、情勢が落ち着くまでの道のりはまだ不透明な段階といえます。

 とはいえ、市場の一部ではこうした中国情勢に対して楽観的な見方もあります。あれだけの抗議活動が行われれば、中国当局もいわゆる「ゼロコロナ政策」の見直しを迫られることになり、政策の緩和によって経済活動が本格的に再開されるのではというシナリオが背景にあるようです。

(図7)NASDAQゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数(日足)とMACDの動き (2022年12月2日取引終了時点)

出所:MARKETSPEEDⅡを元に筆者作成

 実際に、上海総合指数や香港ハンセン指数、そして上の図7のようなNASDAQゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数が示しているように、最近の中国関連の株価指数は底打ちからの反発が目立っています。なお、NASDAQゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数とは、米国株市場に上場している中国企業で構成されている株価指数です。

 確かに、世論の声に押されて政策の見直しや修正が行われることは珍しくありませんし、中国においても、ゼロコロナ政策の一部緩和の動きなどが見られ始めていますが、これまでの中国は国内の抗議活動に対して力で押さえつけることが多かったことを踏まえると、現時点では楽観シナリオに対して懐疑的に見ておいた方が良いかもしれません。

 このような流れで政策の見直しが行われてしまうと、「騒げば自分たちの要求が通る」という実績を作ることになってしまい、今後もこうした国民からの抗議活動が活発になって、歯止めが効かなくなる恐れがあります。そのため、中国当局はある程度の妥協の姿勢を見せつつ、その一方で強力に押さえつける可能性は高いと考えられます。

 中国はゼロコロナ政策以外にも、中国恒大集団をはじめとする不動産セクターの債務問題を発端として、地方政府の財政悪化や金融機関への影響、鉄道などの不採算公共事業などへと懸念が拡大してしまう火種も抱えています。

 目先については、楽観シナリオの優勢が続くと思われますが、その裏では着実に中国のカントリーリスクは高まっていますので、警戒感を解くためには、もうしばらく様子を見極めていく必要がありそうです。

 したがって、今週の日本株は不透明な環境で動きづらい中、値動きパターンの変化の見極めと、堅調さを発揮できるかを試す週になりそうです。