セオリー狂う、時間軸の前倒しに要警戒

 以上、図2~図4で株価の下げ止まりサインを確認してきましたが、いずれも「これまで下げ止まることが多かった」ポイントであると同時に、「ここを下抜けてしまうと株価が大きく下げてしまうかもしれない」という分岐ポイントでもあることに気がつきます。

 例えば、図4のように、株価がVT計算値を超えて下落し始め、3月の安値を下回るような下落となった場合には、N計算値やV計算値などの一段安シナリオが浮上することになります。

 つまり、今週の日経平均は株価の底割れが回避できるかが、試されている面もあるわけです。

 今週から10月相場入りとなりますが、中旬からは日米企業の決算シーズンが本格化することもあり、相場の視点は金融政策から企業業績や景況感などの実体経済へと向かいやすくなります。注目の決算シーズンまでには日数があるため、目先は米10年債利回りや経済指標などの結果によって、株価が上げ下げしていく展開になりそうというのが「一般的なセオリー」です。

 また、景況感悪化の意識が強まれば、リスク回避の債券買いによって、債券利回りを低下させる一因となります。

 インフレの動向についても、資源価格の上昇が今のところ一服しているほか、米住宅価格も下落の傾向が見え始めており、いまだ懸念がくすぶる賃金インフレについても、今週末に発表される米9月雇用統計の結果次第では、株式市場への追い風となる可能性もあります。

 とはいえ、足元の相場環境は決して良いとは言えないのが悩ましいところです。先週の英国では金融政策と経済政策のちぐはぐさが混乱を招き、株式・債券・通貨のトリプル安となる場面がありましたが、他の欧州各国でもインフレと景気後退が同時に進行する「スタグフレーション」への警戒が強まっています。

 また、ウクライナ情勢についても、ロシアがウクライナ一部地域の併合を一方的に進めていますが、それに対する西側諸国からの制裁による影響や、さらなる軍事的緊張の高まりなどにも配慮する必要があります。

 このほかに注意しておきたいのは、先ほどの「一般的なセオリー」の時間軸が前倒しされる展開です。つまり、決算シーズンを待たずに、景況感の悪化を先取りして株価が下落していくパターンです。

 確かに、足元の相場は不安定さを抱えていますが、いずれにしても今後迎えるかもしれない株価の一段安は、金融政策面に加えて、実体経済面についても織り込みが進むことが想定されます。つまり、その先にある相場の底打ちや反発が見え始めてくると考えられ、買いのタイミングを探る好機になり得るという点を意識しておきたいところです。