リーマンショックは、どういう危機だったのか?

 現在の状況と、リーマンショックを比較する前に、そもそもリーマンショックはどういう危機だったかを、簡単に振り返ります。リーマンショックは、21世紀に入ってから米国経済が経験した三つの不況の中の一つです。金融危機を伴うもっとも深刻な不況で、大きなショックとなりました。

 米景気サイクルを認定しているNBER(全米経済研究所)によると、21世紀に入ってから、米景気は3回しか景気後退に陥っていません。2001年のITバブル崩壊不況、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックです。

【1】    ITバブル崩壊不況: 2001年4月~11月(8カ月)
【2】    リーマンショック: 2008年1月~2009年6月(1年6カ月)
【3】    コロナショック: 2020年3月~4月(2カ月)

米GDP成長率(前期比年率・季調済):2000年1-3月~2022年4-6月

出所:ブルームバーグより楽天証券経済研究所が作成

 リーマンショックは、二つの要因によって起こりました。一つは、インフレによって消費が押しつぶされたこと。もう一つは、サブプライムローンといわれる米国住宅ローンが不良債権化したために欧米で金融危機が起こったことです。一言で言えば、「金融危機を伴う世界不況」でした。

 2007年から、北米サブプライムローンの貸倒れが増加したことによって、米国の大手金融機関の財務が悪化し始めました。そして、2008年9月15日、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに、世界中で株が暴落して世界不況となりました。

 リーマン・ブラザーズは巨大金融機関で、「Too big to fail (つぶすには大き過ぎる)」といわれていました。つぶすと金融危機が欧米金融機関全般に広がる可能性があるので、米国政府が公的資金を入れて救済すると予想されていました。

 にもかかわらず、2008年9月15日に破綻が発表されたため、世界的な金融危機は避けられないことがわかり世界の株式市場が暴落しました。実際、この直後にインフレ起因の世界的な需要低下に、サブプライムローン起因の世界的な金融危機が重なり、リーマンショックと呼ばれる世界不況が起こりました。

 米国のサブプライムローンは証券化された上で、世界中で販売されていたので、サブプライムローン危機は米国国内にとどまらず、欧州にも広がりました。サブプライムローンの証券化商品を大量に買い付けていた米国および欧州の大手金融機関の財務が急速に悪化して、欧米にまたがる金融危機となりました。

 日本の金融機関にも一部、サブプライムローン商品を買っていたところはありました。そのために損失を出した金融機関もありましたが、財務に重大な影響が及ぶような投資はありませんでした。そのため、日本への金融危機の波及はありませんでした。

 以上、リーマンショックがどんな危機であったか振り返りました。次に、これからリーマン級危機が起こるか否か考えるために、今起こっている危機と、リーマンショックを比較します。