イノベーション企業に注目。株価が売られている今こそチャンス

 今回の注目銘柄は株価が大きく下がっているグロース株です。足元の業績は悪くとも、コアとなるビジネスがしっかりしている銘柄、長期的に大きな潜在成長力があるとみられるイノベーション企業に注目しました。

 グロース株は大きく化けるところが最大の魅力です。足元で株価が売られている今こそ、チャンスも大きいと考えます。

注目株1:センスタイム(00020)

 画像認識システムを中核としたAI開発の中国大手企業です。創業者の徐立(シュー・リー)CEOはAI研究者、上海交通大学で修士課程を修了、香港中文大学で博士号を取得、研究成果を実用化しようと2014年、同社を設立しました。

 部門別売上高(2021年12月期)では、エネルギー、インフラ管理、製造業、物流、小売り、金融、通信などの企業向けが42%、交通、防疫、防災、環境などのスマートシティー向けが45%、スマホアプリなどの生活関連向けが9%、運転補助や無人走行などの自動車向けが4%です。

 企業向け、スマートシティー向けでは本土シェアトップです。生活関連向けとして、200以上のスマホアプリ、ゲームアプリや、60以上の大型商業施設、博物館、空港などで同社のメタバース技術が使われています。

 2021年12月期業績は36%増収、171億元の赤字(2020年12月期は122億元の赤字)でした。顧客数の拡大により、スマートシティー向けが57%増収、企業向けが32%増収となり、売上をけん引しました。

 ただ、研究開発費は前年同期と比べ47%増加、売上高の77%を占めるほどです。管理費負担も重く、純損失は拡大しています。2022年12月期も積極的な拡大戦略の継続により、増収ながらも赤字が続くと予想されます。

 同社はソフトバンク、アリババ・グループ、春華キャピタル、Silver Lakeキャピタル、IDGキャピタルなどから資金調達を行い、成長することで、上場に至っています。有望なイノベーション企業としてグローバルで注目を集める企業ですが、顔認証技術が人権侵害に使われているとして、米財務省は昨年12月、同社株について証券投資を禁止するリストに加えました。

 上場後は6カ月の売却禁止制限がかかっていたのですが、それが明けた時点で欧米系の大株主は売却を余儀なくされ、株価はいったん暴落しています。

センスタイムの週足

期間:過去1年(2021年8月19日~2022年8月19日)
出所:楽天証券ウェブサイト

 同社は華為技術と同様、米国が戦略的に成長を阻止したい企業であり、それだけ潜在的な成長力は大きいと判断します。

 7月29日から、港股通対象銘柄に追加されたため、本土投資家が購入することができるようになりました。課題とされる研究開発費に比べ売上の伸びがやや鈍いといった点が解消されるにつれて、本土資金が断続的に流入すると予想します。

注目株2:百度(09888)

 中国最大のインターネット検索エンジンを運営する企業です。ニューヨーク州立大学バッファロー校に留学、ポータルサイト運営会社のインフォシーク社などでエンジニアとして働いた経験のある李彦宏(ロビン・リー)CEOが中国に戻り2000年1月、北京で創業したIT関連企業です。

 比較的早い時期からこの業界に参入したこと、漢字検索の技術ではグーグルなど海外企業と比べ有利な立場にあったこと、当局が海外企業の市場参入を規制したことなどから生き残り、高成長することができました。

 2005年にはナスダック市場に上場しています。

 収益の柱はオンライン情報検索サービスに絡むオンラインマーケティングで売上高全体(2021年12月期)の59%を占めています。そのほか、クラウドビジネスが12%を占め、自動運転技術を含めた中核業務全体では76%を占めています。

 残りは、ナスダック市場に上場する子会社「愛奇芸」の売上高が25%、部門間相殺が▲1%です。愛奇芸は動画サイトを運営する企業で、有料会員へのサービス、オンライン広告などを収益源としています。

 2021年12月期業績は16%増収、54%減益でした。愛奇芸の売上高は伸び悩みましたが、中核ビジネスのオンラインマーケティングが12%増収と堅調、さらにクラウドビジネスが64%増収と急拡大したことで全体の売上高は二桁増となりました。

 一方、販管費、研究開発費負担増や、前期発生したその他特別利益の反動減などから大幅減益となりました。2022年12月期の市場コンセンサスは3%増収、16%減益です。

百度の週足

期間:過去2年(2021年~2022年8月19日)
出所:楽天証券ウェブサイト

 当局によるハイテク企業に対する監督管理の強化は一段落しています。まだ収益貢献は小さいですが、同社が開発を進める自動運転システムはグローバルでも評価が高く、足元では政策により新エネルギー自動車の販売が急拡大しており、今後、これが株価に対して支援材料になるだろうとみています。