中国軍が台湾を包囲する形で軍事演習、米中対話の糸口途絶える

 米ソフトランディング期待が高まり、日米とも株価が上がる中で、先週は一つ、将来の世界経済・株式にとって重大な悪材料が出ました。

 台湾をめぐる米中対立が激化し、台湾有事への緊張が高まったことです。8月2~3日、米国のナンシー・ペロシ下院議長が台湾を訪問し、台湾と世界の民主主義を守る米国の決意が揺るぎないことを表明しました。

 これに中国が猛反発し、台湾を取り囲む六つの地域で、過去に例のない大規模な軍事演習を実施しました。演習では、複数の弾道ミサイルを発射し、うち5発が日本のEEZ(排他的経済水域)に落下したと推定されます。日本のEEZに中国がミサイルを撃ち込んだのは初めてとなります。

 これを受けて、米中の対話の窓口は閉鎖されつつあり、米中対立が一段と激化することが必至となりました。中国は、米国と外交で同一の歩調を取る日本も非難の対象としています。

 米中対立がさらに激化すると、中国でビジネスを行う日本企業に重大な悪影響が及ぶリスクが高まります。

 先週の日米株式市場は、この悪材料には反応しませんでした。短期的に、重大な問題が発生するとは思われていないからです。ただし、この問題に解決のメドはなく、対立激化が続けば、いずれ世界経済・世界の株式市場に大きなダメージを及ぼす可能性があります。

 今後、この問題の進展を、慎重にウオッチしていく必要があります。気づいたことがあれば、本コラムで報告していきます。

日経平均の一本調子の上昇は見込めず

 2万8,000円を超えた日経平均ですが、このまま一本調子の上昇が続くとは考えられません。米中対立がどこまで激化し、日本にどういうダメージが及ぶか分からない状況だからです。

 また、ロシアとの対立激化によって、ロシアでビジネスを行ってきた日本企業にどんなダメージが及ぶかも、現時点でまだはっきりしていません。

 さらに、米ソフトランディング期待が出たとはいえ、まだ米利上げは続く見込みです。このように、不透明材料が多い現状を考えると、日経平均はまだ短期的に急落する局面があると考えられます。

 日本株は割安で、長期的に買い場を迎えていると判断していますが、短期的なショック安がまだ終わっていない可能性があることを考慮し、時間分散しながら買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。

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