世界景気が悪化する中、日本企業の決算は意外に悪くない

 米国の4-6月GDP(国内総生産)は前期比年率マイナス0.9%でした。1-3月の同マイナス1.6%に続き、2四半期連続のマイナス成長でした。好調だった米景気に急ブレーキがかかり、景気後退に近い状況におちいっていることがわかりました。

 中国の4-6月GDPは前年比+0.4%の低成長でした。欧米と同じ、前期比年率で見ると、約10%の大幅マイナスでした。

 このように4-6月は米中および世界景気に急ブレーキがかかりました。日本の企業業績は米国・中国景気の影響を強く受けますので、こういう時は企業業績も悪化するのが普通です。ところが、発表が始まっている日本の4-6月決算は思ったほど悪くありません。

 まだ4-6月決算の発表は終わっていないので、全体を総括することはできませんが、7月中に発表された決算を見る限り、「米中および世界景気が悪化しつつある割には、意外に悪くない」印象です。

企業業績が堅調な理由

 米中景気が悪化している割には、4-6月決算は今のところ意外にしっかりです。それには三つ要因があります。

【1】円安

 急激に進んだ円安は輸入物価の上昇を招き、国民生活にマイナスですが、企業業績にはプラスです。日本企業は海外で巨額の利益を稼いでいますが、海外で稼ぐドル建ての利益の円換算額が、ドル高(円安)によって膨らむ効果は大きいです。

【2】 リオープン(経済再開)

 新型コロナウイルス変異株の1日当たりの新規感染者数が、日本はついに世界最多になってしまいました。それでも、重症化リスクが低いこともあり、ウィズコロナの経済再開が進みます。まだ、本格的なリオープンは実現していませんが、それでも徐々に経済が再開されつつある効果で、4-6月は内需(消費)回復が進み、内需企業の利益回復を後押ししました。

【3】インフレ

 日本のインフレ率もついに2%を超えました。インフレが企業業績に与える影響は、プラスマイナス両方がありますが、今のところ、プラスの方が大きくなっています。国際的な市況上昇の恩恵で、海運や総合商社などの業績が好調です。

 米中景気が減速している中でも、内需回復の効果もあり、以下の通り、6月日本銀行短観の大企業DIは堅調です。

日銀短観、大企業製造業・非製造業DI:2018年3月~2022年6月

出所:日本銀行「全国企業短期経済観測調査」

 米国・中国景気の減速を受けて、製造業の景況は低下していますが、リオープンの期待から非製造業は上昇しています。ともに、景況感の分かれ目である0は上回っています。