共和党支持者を取り込むべく物価高鎮静化が急務

 足元、高インフレは米国国民の意識に大きな影響を与えています。以下のとおり、多くの米国国民の意識は「インフレ(物価高)」に向いています。

図:「今日、米国が直面している喫緊の課題は何ですか?」の回答(米国の世論調査)単位:%

出所:米キニピアック大学のデータをもとに筆者作成

 米キニピアック大学の世論調査によれば、「今、米国が直面している喫緊の課題は何ですか?」という質問に対し、全体の34%が「インフレ」と回答しました(6月8日公表分)。新型コロナよりもウクライナ危機よりも高い値です。

 ウクライナ危機が発生して1カ月が経過した3月以降、エネルギーや穀物の価格が歴史的な水準で高止まりし、身近な品々の価格が上がり始めました。こうした流れを受け、徐々に「インフレ」と回答した人の割合が高くなってきています。

 以下のグラフは、「インフレ」と回答した人の属性を示しています。「共和党(ドナルド・トランプ前大統領推薦者所属)支持者」「民主党(ジョー・バイデン現大統領所属)支持者」「どの政党も支持しない」の三つに分けています。

図:「インフレ」を喫緊の課題と考える人の属性 単位:%

出所:米キニピアック大学のデータをもとに筆者作成

 今年11月8日に行われる中間選挙(4年ごとの米大統領選挙の間の年に行われる。上院議員の3分の1と下院議員の全議席が改選。複数の州で州知事選も行われる)まで、約4カ月となりました。

 報道では、5月から本格化した予備選(本選の候補者選び)では、各地でトランプ前大統領が推薦する共和党候補が優勢、とされています。

 バイデン大統領が、良い形で中間選挙を乗り越えるためには、民主党支持者だけでなく、共和党支持者の一部も取り込む必要があります。そして、その共和党支持者の半分弱は、上記のとおり「インフレ」を喫緊の課題だと認識しています。

「ねじれ」(上下院どちらかで、与党の議席数を野党の議席数が上回る状態)を避け、2024年までの残りの任期の政権運営をスムーズにするため、「インフレ退治」は、バイデン氏の喫緊の課題といえます。