原油は「ウクライナバンド」に支えられ高止まり

 マイナス圏に入った銘柄が複数ある中で、なぜエネルギーと穀物はプラス圏で推移しているのでしょうか。いまだ解消の糸口が見えない「ウクライナ危機」起因の、供給懸念が解消されていないためです。

 ロシアは今、自国のエネルギーや穀物の出し渋りをしていたり、港を封鎖してウクライナ産の穀物を輸出できないようにしたりしています。こうした供給懸念は、ウクライナ情勢が鎮静化しないかぎり解消されません。

 FRBをはじめとした西側主要国の中央銀行たちの多くは、金利を引き上げてインフレを退治しようとしていますが、足元のインフレが景気過熱型(デマンド・プル型)ではなく、供給懸念型(コスト・プッシュ型)であるため、その効果は限定的といえます。

「足元、さまざまなコモディティ価格が下落しているのは、利上げが功を奏しているためだ」と耳にすることがありますが、これは正しい表現ではありません。利上げによる「副作用」によってコモディティ価格が下落しているのです。

「ウクライナ情勢の鎮静化」という決定打が出ないため、以下のとおり原油相場は100ドル近辺という、歴史的に高い水準で推移し続けています。下が95ドル前後、上が112ドル前後のレンジ相場が続いています。

図:NY原油先物(期近)日足 単位:ドル/バレル

出所:マーケットスピードⅡのデータをもとに筆者作成

 ウクライナ危機発生を機に、明確に100ドル超が常態化しています。上記のレンジは、ウクライナ危機があり続ける以上、存在し続ける可能性があるため、「ウクライナバンド」と呼ぶことにします。

「利上げ」は市民の身の回りの品々の価格を下げる手段になり得ても、そうした品々の根源にある原油相場を下げる決定打にはなり得ません(副作用で下がることはあるにせよ)。

 西側が望む高インフレの根本解決に資する、原油相場の大局的な下落トレンドをつくることができるのは、供給懸念の解消(≒ウクライナ情勢の鎮静化)または需要急減、あるいはその両方です。