中長期的には、中国リスクにも要警戒

図4 株価材料の整理

 上の図4は、株価材料をざっくりと整理したものです。インフレ動向と金融政策への思惑、景況感の変化という「三つどもえ」の相場の構図に影響を与えそうな材料を周囲に並べています。

 この中で、企業業績については先程も述べてきた通りです。金融政策については、来週開催される米FOMCのほか、日本銀行金融政策決定会合やECB(欧州中央銀行)の理事会が今週開催されます。また、日本国内でも感染者が増加してきた新型コロナウイルスの動向も気掛かりですし、今週は資源価格が注目されるかもしれません。

 具体的には、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスのパイプライン「ノルドストリーム」が、現在定期点検中で供給がストップしているのですが、今週21日(木)が点検終了日となります。ウクライナ情勢などの影響でロシア側の思惑が働き、終了日になっても運転が再開されなかった場合には波乱要因となる可能性があります。

 このほか、中長期的には中国の動向にも要警戒です。

 中国では先週の15日(金)に4-6月期のGDP(国内総生産)をはじめ、6月の各経済指標がまとめて公表されました。とりわけ、GDPについては実質で前年同期比0.4%増と、前期(1-3月期の4.8%増)や市場予想(1.1%増)と比べると、かなりの失速感を与える結果となったのですが、国内外を問わず、今回の中国GDPの結果に対する金融市場の反応は限定的です。

 中国は秋に控える共産党大会を前に、政治・経済の安定が最優先事項となっているため、経済政策への期待が相場を支えている面があります。

 実際に、上海のロックダウン(都市封鎖)が解除される直前の5月末に、中国国務院が「経済安定のための包括的政策措置」を打ち出しました。

 6分野33項目にわたるさまざまな経済支援策が盛り込まれ、金額的にも、2008年のリーマンショック後に発表された、いわゆる「4兆元の経済支援策」の規模を上回っています。

 これにより、「中国経済は4-6月期が最悪期で、ゼロコロナ政策が再び強化されない限り、以降の経済は急回復」という見方が優勢となっているようです。

 もともと、中国経済は不動産業界への締め付け強化と、ゼロコロナ政策によって変調していったわけですが、足元でも、不動産大手の世茂集団が発行した外貨建て債券の元利金の支払いができず、債務不履行(デフォルト)に陥(おちい)ったほか、事の発端となった中国恒大集団も、国内向けの人民元建て社債の償還延期を要請したものの、債権者がこれを拒否するなど、不動産業界の資金繰りが厳しい状況は変わっていません。

 さらに、不動産開発案件の遅延・停止による他業界への影響や地方政府の財政悪化、不動産業の資金調達のために発行された理財商品などの金融商品での損失発生による投資家への影響など、さまざまな問題も噴出し始めており、一部の銀行から現金が引き出せず、大規模な取り付け騒ぎも発生しています。

 中国経済に対する懸念はこれまでにも、「騒がれては否定される」ということがたびたび繰り返されてきましたが、最近の情勢を観察すると、思った以上に「カネ回り」が悪化しているかもしれず、このような状況下では、かつてのような大規模な経済政策が効果を発揮しない、もしくは機能しにくくなっている可能性があります。

 そのため、今回の中国リスクについては、あまり楽観しない方が良いかもしれません。