東証再編で継続が難しくなると考えられる株主優待、三つのタイプ

 株主平等の原則に抵触すると見なされるリスクが高い優待は、廃止になる可能性もあります。リスクが高いと考える三つのタイプについて説明する前に、上場企業が優待を実施する目的について、改めて説明します。上場企業が、小口投資の個人投資家を優遇する株主優待を行う理由は、二つあります。

【1】個人株主数を増やしたい

 上場企業の上場維持基準の一つに、株主数があります。グロース上場企業で150人以上、スタンダードで400人以上、プライムで800人以上の株主が必要です。機関投資家の保有が増えすぎると、株主数が足りなくなる可能性があります。そうならないように、上場企業は個人株主の数を増やそうとします。

【2】自社製品・サービスのファンを増やしたい

 株主を潜在顧客ととらえて、自社製品やサービスを提供することでファンを増やそうとしています。

 以上を踏まえた上で、今後継続するのが難しくなると私が考える優待の三つのタイプを説明します。以下です。

【タイプ1】自社製品・サービス以外を優待品として贈呈するケース

 自社の事業とまったく無関係の製品・サービスを贈呈することは、平等の原則に反するとみなされる可能性があります。特に、QUOカードなど現金に近いものを小口株主優遇で贈呈することは、自社ビジネスとの関わりを説明できない限り、平等の原則に反するとみなされるリスクがあります。

 一方、自社製品の贈呈、あるいは自社製品・サービスの購入に使える金券・割引券などの贈呈、自社サービスを使って提供される商品の贈呈などは、販促活動の一環とみなされるので、問題とならないと判断しています。

【タイプ2】配当金と比較して、株主優待のメリットが大き過ぎるケース

 100株以上保有する株主に4,000円相当の自社製品詰め合わせを贈呈する企業を考えてください。その企業の1株当たり配当金が6円だったとしましょう。100株保有する株主は、1年間に4,000円相当の優待を得つつ、配当金は600円(税引前)しか得られないことになります。それでは配当金に比べて、優待が大き過ぎます。

 10万株保有する株主も、優待は4,000円相当で変わらないので、株主平等の原則に反するとみなされるリスクがあります。

【タイプ3】業績や財務に問題がある企業が優待を継続するケース

 業績や財務の悪化で減配を余儀なくされる企業が、優待をそのまま維持していると、株主平等の原則に反すると見なされる可能性があります。

 あくまでも私見ですが、以上が、東証再編で継続が難しくなる優待の三つのタイプです。オリックスの人気優待であるカタログギフトは、必ずしも同社製品を贈るものではありません。したがって、廃止されるリスクがある優待だったと考えることができます。同社のように優待廃止が増えてくる可能性があります。

 このレポートでは、三つのタイプに該当する具体的な銘柄名はあげません。なぜならば、三つのタイプに該当すると言っても経営者の考えによって優待が維持される場合もあるからです。またその逆で、三つのケースに該当しなくても優待が廃止されることもあります。経営者の考え方を推し量ることはできません。

 読者の皆様はそれぞれ、ご自身で保有する優待銘柄が、上記三つのタイプに該当するか否か考えてください。

 なお、優待人気NO.2のイオン(8267)ですが、私は優待が廃止されるリスクは低いと判断しています。中長期的に業績拡大余地があると判断しており、優待を得ることを目的に長期投資するのに理想的と判断しています。詳しくは、レポート末に挙げている参考レポートをご参照ください。また、いつものお願いですが、最終的な投資判断はご自身でなさってください。

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2022年4月6日:株主優待廃止が増える?東証再編で継続が難しくなる優待、3つのタイプとは