※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「【日本株】中部電力の投資判断 AVOID(見送り)からHOLD(保有継続)へ」
中部電力から選別的に投資して良いと判断
中部電力について書く前に、電力業界全体への考え方を書きます。電力株の投資判断をする際に避けて通れないのは、原子力発電(原発)事業のリスクについて考えることです。これまで電力9社について私は、Avoid(投資は見送り)の判断を継続してきました。電力9社とは、原発を保有する9社【注】、すなわち、東京電力HD(9501)、中部電力(9502)、関西電力(9503)、中国電力(9504)、北陸電力(9505)、東北電力(9506)、四国電力(9507)、九州電力(9508)、北海道電力(9509)のことです。
【注】電力9社
沖縄電力(9511)は原発非保有なので、この9社に含まれません。沖縄電力は今日のレポートでの投資判断の対象外とします
再稼働できないまま原発を保有し続けるコストが高いこと、使用済み核燃料の最終処分方法が決まっていないことが、電力9社に投資しない方が良いと考えてきた理由です。詳しくは後段で説明します。
今回、中部電力の投資判断を引き上げるのは、私が考える原発再稼働の条件が一部整いつつあると考えるからです。原発再稼働の条件として、私が過去のレポートに記載しているのは以下3つです。
原発を脱炭素の選択肢に入れるために必要と考える条件
【1】十分な安全性を確保する
【2】核燃料サイクルが実現不可能であることを公式に認める
【3】使用済み核燃料の最終処分場を確保する(深度1,000~5,000メートルの地中埋蔵も選択肢)
中部電力の浜岡原発は【1】の条件を満たしつつあると考えています(あくまでも私見)。【2】【3】についてまだ議論が始まっていませんが、いずれ世界的に議論が始まり、なんらかの結論が出ることになると予想しています。
原発事業が将来的にどうなるか現時点で見通すことは困難です。ただし、以下で述べる環境変化により、原発が見直される可能性が少し出てきたことを勘案し、電力株の投資判断を変更することとしました。電力株への投資を少しだけ再開しても良いと考えました。
財務・収益基盤・安全対策進展などを考慮した上で、電力株では中部電力から選別的に投資していって良いと考えました。中部電力の予想配当利回りは、5月10日時点で3.7%です(同社の2023年3月期1株当たり配当金(会社予想)50円を、5月10日の株価1,345円で割って算出)。高配当利回り株として長期保有していく価値があると判断します。