金ETF代表銘柄「SPDRゴールド・シェア」の金現物保有高の推移
金においては、
(1)インフレになったら現物資産である金は買い
(2)インフレになったら金利が上昇するから、金利の付かない金は売り
という2つの動きがあり、2018年から2021年9月ごろまでは(2)のほうが強かったため、米国において物価が上昇していながら、なかなか金が上がらない状況になったとみています。
この(2)の動きを主導していたのが、金ETFだったと考えています。
金ETFの代表銘柄である「SPDRゴールド・シェア」の金現物保有高の推移についてみてみましょう。
「SPDRゴールド・シェア」の金現物保有高と金価格の推移
このグラフをみると、2020年の夏にかけて金現物保有高が大幅に増加し(金ETFが大きく買われ)、金価格が大きく上昇、2020年夏から2021年の年末にかけては逆に、金現物保有高は減少し(金ETFは売られ)、金価格は低迷したことがみてとれます。
金の本格上昇が始まった理由
金現物保有高をみてみると、2020年10月には1,278トンだった保有高が、2021年12月には973トンと、305トンも減った状態になるまで売られました。この動きが、今年の1月に入ってから増加に転じていて、3月4日時点では1,054トンと、2カ月ほどで81トン増えてきています。
このように金ETFが買われてきたため、金の本格上昇がいよいよ始まったとみています。
これは、次のようなシナリオを感じた動きとみています。
(3)インフレに既になっており、今後、金利が上昇することにより景気が悪化。ウクライナなどの地政学的リスクもあり、安全資産である金は買い。
一般的には「金利が上昇→債券価格は下落」「景気が悪化→株式市場は下落」で、インフレ状態で金利が上昇し、景気の悪化が見込まれる状況においては、債券や株式への投資は分が悪く、資金が向きにくくなります。そのような局面(いわゆるスタグフレーション)では金が買われやすいのですが、まさにその局面を感じ取った動きが金ETFにおいて始まったとみています。
ただし、現時点でスタグフレーションになっているかというと、まだ企業業績は悪化していません。悪化どころか、足もとのアナリスト見通しは、まだ想定よりも伸びている状況にあります。
もし、このまま景気が悪化することなく企業業績が伸び続ければ、株式に資金が向く分、金に回ってくる分も限られますが、企業業績が実際に悪化してきた時には、金は上昇ピッチを速めてくるものと考えています。
もし、今、保有しているポートフォリオがスタグフレーションにならないことを前提としたものになっているとしたら、早々に見直すべきかもしれません。
投資はあくまでも自己責任で。
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