トピック:ビットコインがデジタルゴールドと呼ばれる意味

【グラフ3】金・BTC相関係数

Bloombergより楽天ウォレット作成

 上記【グラフ3】はBTCと金(スポット)との相関係数の推移だ。プラス0.5を超えると順相関、マイナス0.5を下回ると逆相関関係にあると評価される。インフレヘッジがテーマとなった2020年には順相関の関係が続いたが、このところ逆相関に陥(おちい)っている。

 先ほど、BTCは通常時はリスク資産だが、法定通貨に対しては逃避資産として働くと申し上げたが、この点を金との関係で説明しよう。

 まず代表的なリスクオフ局面、戦争が始まった場合を想定しよう。そうした大きなリスクイベントが発生したら、多くのディーラーはポジションを小さくしてリスク量を減らし、資産をできるだけ現金など流動性の高いもので保有しようとする。そういう局面では金は現金や国債に次いで流動性が高い商品として選好される。一方でBTCは流動性に乏しく換金性に劣る商品としてエクスポージャー縮小の対象になり、金とBTCとは逆相関になりやすい。

 一方、現金、すなわち法定通貨の価値に不安が生じた場合はどうなるか。人々はわれ先にと他の法定通貨に乗り換えようとするだろう。そして、今回のロシアの様に外貨への交換が難しくなったり、他の法定通貨も似たような状況である場合、人々は代替資産として金やBTCに資産を避難させる。こうした場合には金とBTCとは順相関になりやすい。

 こうして金とBTCとは順相関と逆相関とを繰り返すわけだ。なお、2020年後半から2021年までの逆相関は、金とBTCとどちらがインフレヘッジ資産としてふさわしいかがウォール街で議論となり、ポールチューダーやドラッケンミラーといった伝説の投資家たちが、ボラティリティの高いBTCを好んだということに起因している。

 このように、デジタルゴールドと呼ばれることもあるBTCは、金のような逃避資産としても、逆のリスク資産としても働く性質があり、法定通貨すなわち「お金」の価値の問題かどうかが分かれ目となっている。

 理由も明白で、BTCは国家が管理する法定通貨の代替手段として、誰も管理しない新たな「お金」として設計されたからだろう。そういう意味ではデジタルゴールドというよりはデジタルマネーという方がしっくりくる。BTCのホワイトペーパーにも「金融機関の介在なしに、利用者同士の直接的なオンライン決済が可能」とする「電子通貨(electronic cash)」と冒頭に記載されている。