売買代金ランキング(5銘柄)

1 メルカリ(4385・東証マザーズ)

 年替わりで始まった「グロース株売り」を主導したのはヘッジファンドなど機関投資家。そのため、下げの初動で先陣を切ったのが東証1部の大型グロース株、そしてマザーズでは時価総額トップのメルカリでした。月間27%の下落は、2018年6月のIPO以降で2番目の大きさ。マザーズ指数のウエートは1月末時点で13.1%ですので、この株の27%下落だけでマザーズ指数を3.5%押し下げたと計算できます。

 なお、メルカリは14日、4月からの新市場区分で「プライム市場」に変更申請をしたと発表しています。新市場区分が始まる4月4日時点ではグロース市場になりますが、東証の審査で認められればプライムに昇格。その場合はTOPIXの組み入れに伴うリバランス需要が生じますのでポジティブですが、時期は未定です。時期が分からないカタリストを理由に、高バリュエーション株を買い持ちする投資家は居ないようで…。

2 日本電解(5759・東証マザーズ)

 年明け直後、大発会は好発進で上場来高値を5,890円に切り上げます。ただし、ここが株価のピークに。ピークに向けた材料も、米EV大手テスラ関連としての思惑でした。テスラの10-12月期EV出荷台数が市場予想上振れで、テスラに車載電池を供給しているパナソニックに電解銅箔を供給しているのが同社(=テスラ関連)という位置付け。ただ、そのテスラ株がグロース株売り地合いで急落し…。

 株価の大きな下落で「下げが売りを呼ぶ展開」になると弱いのが日本電解。というのが、信用買い残が昨年12月末で111万株と、発行済み株数(725万株)の15%強もある超・信用買い銘柄(=個人短期勢の人気株)だったからです。ロスカットで信用買い残は1月末で99.6万株に減少したとはいえ、まだ信用買い残比率は13%台後半。いまだ、下げに弱い超・信用買い銘柄であることには変わりなさそうです。

3 Enjin(7370・東証マザーズ)

 売買代金ランキング上位で唯一の1月逆行高銘柄。動意付いたきっかけは、14日に発表した中間決算でした。売上高が前年同期比34%増、営業利益が同71%増と強い伸び率。通期予想は据え置きでしたが、同社は下期偏重型のビジネスモデルになっています。上期で営業利益の進捗(しんちょく)率が55%に達したのであれば、通期上振れは確実といった解釈がなされたようです。

 それ以上に、決算発表の手前で株価が調整し切っていた点が大きかったかもしれません。同社は昨年のIPO後に大人気化した銘柄です。昨年9月には高値で5,220円までありましたが、決算発表当日が上場来安値、しかも高値の3分の1程度(1,880円)値ごろ感に好決算が加わり、投資家知名度が高かったことも手伝って、ひと頃の人気を引き戻した格好に。

4 田中化学研究所(4080・ジャスダック)

 EV関連(リチウムイオン電池の正極材料を手掛け、同社技術のライセンス契約先であるスウェーデンのノースボルトがリチウムイオン電池の生産を開始)としてジャスダック屈指の人気銘柄となっていた田中化研。昨年12月の大納会に、2017年11月以来4年ぶりの高値をとった数少ないモメンタム株でもありました。昨年末時点の信用買い残は203万株で、これは同社株として上場来最高水準です。

 1月に入り、グロース株売りの流れが高PER(株価収益率)株の同社にも波及。ただ、下値での押し目買いも入りながら迎えたのが28日引け後の第3四半期決算発表でした。利益は黒字転換しているのですが、通期予想は中国向けの一部顧客からの需要減を理由に据え置き。

 高値圏での個人持ち高が高かったこともあり、翌日は売り気配でストップ安(前日比23%安!)で全株一致しました。衝撃はその後にも…。23%安から終値ベースでは2.5%高まで急浮上。押し目買い入る株、という印象を植え付けました。

5 JTOWER(4485・東証マザーズ) 

 年明けと同時に始まった高バリュエーションの「グロース株売り」。その最たる売りターゲットともいえたのが、マザーズではJTOWERだったように思われます。昨年12月29日から、年をまたいで1月17日まで「11営業日続落」(この期間だけで約3割下落)という、リバウンド(息継ぎ)無しの調整に見舞われました。

 この銘柄の特徴は、マザーズ銘柄の中では機関投資家の関与が高い株であること、そしてアナリストが複数カバーしていて強気に傾いた株であること。類似会社が無いこともあり、高いバリュエーションを許すといった面もありました。

 結果、昨年末時点の予想PSR(株価売上高倍率)で40倍を超えるハイパーグロース株扱いになっており、下げても下げても下値メドの見えない状態。ヘッジファンド勢の空売りターゲットにもなっていたのでは? と想像されます。