損失の繰り越しについて勘違いしやすいポイントを押さえておこう

 損失の繰り越しについて、とても勘違いしやすいポイントが2つあります。これを知らないと、損失を繰り越したつもりができていない…という悲しいことになりかねませんので、しっかりと押さえておいてください。

(1)源泉徴収ありの特定口座であっても確定申告が必要

 前回、一般口座と特定口座の違いにつき説明した際、源泉徴収ありの特定口座は税金の計算だけでなく、納税も証券会社が行ってくれるので、確定申告不要です、とお伝えしました。

 通常、源泉徴収ありの特定口座の解説をみると、同じような説明になっています。

 ところが、これだけでは大事な点が抜け落ちているのです。確定申告は確かに不要ですが、「損益通算したり損失を繰り越ししたい場合は源泉徴収ありの特定口座であっても確定申告が必要」です。

 結構な数の方が、「源泉徴収ありの特定口座は何でもかんでも全部証券会社が代わりに行ってくれる」と思いこんでいます。そのため、本来はご自身で確定申告しなければならない手続きにもかかわらず、自分ではなにもしなくてよい、と勘違いしてしまうのです。

 源泉徴収ありの特定口座でしてくれるのは、売却損益の計算と納税、そして同じ年に生じた売却損と配当金の損益通算(株式数比例配分方式の場合のみ)だけです。それ以外のこと、特に売却損を繰り越したり、売却益と過去の売却損とを損益通算するためには、ご自身で確定申告が必要になる点は必ず知っておいてください。

損失繰り越しの確定申告は1回だけではダメ?

(2)損失の繰り越しを複数年にわたり行うためにはその都度確定申告が必要

 売却損につき確定申告することで、翌年以降3年間にわたり繰り越して、将来の売却益や配当金と損益通算し、節税につなげることができる…、これはその通りです。

 でも結構な方が勘違いしているのが、売却損が生じた時に確定申告すれば、その後3年間自動的に損失を繰り越してくれる、と思っている点です。実はそうではないのです。

 確かに、例えば令和3年に生じた売却損を確定申告すれば、令和4年に繰り越すことができます。

 しかし、令和4年が終わってもまだ損益通算できない損失が残っている場合、再度確定申告をしないと、令和5年に繰り越すことができないのです。

 同様に、令和5年が終わっても損益通算できず残っている損失については、もう1度確定申告をしないと令和6年に繰り越すことができません。

 損失の繰り越しは3年間にわたりすることができますが、そのためには確定申告を3年間毎年行わないといけない、ということです。

 なお、繰り越すための確定申告を忘れていた…という場合、そもそも確定申告書を提出していないのであれば、更正の請求の手続きにより対応できる可能性があります。しかし、源泉徴収ありの特定口座で生じた損失につき申告を失念し、かつ確定申告そのものは行っているというケースでは残念ながら損失の繰り越しは認められないことになります。

 損失を繰り越すときは毎年確定申告を忘れずに行うようにしましょう。