運用会社の体制も投資に欠かせない視点

 パートナーシップ制という会社の形態と欧米の運用会社では珍しい企業文化が、「すべてはお客さまのために」という姿勢で運用に臨むファンドマネジャーたちをサポートする。

篠田 ベイリー・ギフォード社のLTGG戦略を活用する「ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド(愛称:ロイヤル・マイル)※3」は、そうした姿勢で運用されているのですね。会社の形態は、運用会社としては珍しいパートナーシップ制ですね。

小宮 当社は、お客さまのための資産運用事業以外は一切手掛けていません。そして47名(2022年1月時点)の現役パートナーによって100%所有されている企業です。これは、長期的にお客さまが満足していただくことが常に重要なポイントであることを意味します。

 例えば短期的に業績が悪化したとします。外部の株主からの圧力を受けて、コスト削減のため人員整理をするとどうなるでしょう。経営資源がシュリンクしてしまいます。我々はリーマン・ショック直後もコスト削減を理由にした解雇を一切せず組織を強化してきました。長期的にはそれが我々のお客さまのためになると考えているからです。

篠田 運用体制も含めてベイリー・ギフォード社の高い評価につながり、ベイリー・ギフォード社は年金基金の資金運用を任されているのですね。年金基金が求めている運用というのはどのようなものなのでしょう。意外と知られていませんが、アクティブ運用とパッシブ運用の組み合わせになっていますよね。

小宮 その通りです。私が知る限り、世界最大級の年金基金でアクティブ運用だけ、パッシブ運用だけというケースはありません。そうした年金基金は株式市場のベータ(株式市場全体からもたらされたリターン)が欲しいのでパッシブ運用にも投資を行う一方、超過リターンを追求するためにアクティブ運用を組み合わせているのです。

篠田 アクティブ運用では十分なリターンを得ているのでしょうか。

小宮 実は今から6年ほど前の話ですが、イギリスの公的年金がアクティブ運用をやめるという議論をしたことがありました。アクティブ・マネジャーはアルファ(運用によって得られる利益)が出せていないので、全ての資金をパッシブ運用に切り替えたらどうかという指摘があったのです。

 その時我々は、資産運用業界の一社として、「そのような単純化した議論は良くない」と反対しました。市場全体がパッシブ運用だけになったら市場自体が機能しなくなるし、魅力的な銘柄を選ぶことができる優秀なアナリストがいらないなんてことはあり得ない。

 そして、アクティブをひとくくりにする主張は物事を単純化しすぎているとして強い反対意見を表明しました。当社がどの程度の影響力があったかは別に、熟慮を重ねてイギリスの公的年金は全面パッシブ化を踏みとどまったのには安心しました。

篠田 日本の新しい投資家のみなさんが、「インデックス、パッシブだけが完璧だ」と思い込んでいるのは、少しもったいないですよね。

 自分がいま何に投資しているのか、ということを改めてチェックいただき、年金の考え方、リスクとリターンの関係について思いをはせていただけたらうれしいです。小宮さん、今日は興味深いお話をありがとうございました。

小宮 わたしどもも、日本の投資家のみなさんの長期的な資産形成のサポートを少しでもできたら、大変幸いです。今日はありがとうございました。

※3:ベイリー・ギフォード社のLTGG戦略を、三菱UFJ国際投信が設定・運用している「ベイリー・ギフォード世界長期成長株ファンド(愛称:ロイヤル・マイル)」は活用しています。