本当のリスクは「長期的な株価の下落」?

 アクティブ運用もパッシブ運用も株式投資をしていることに変わりはない。そこで重要なことは、リターンとリスクの関係を整理することだ。

篠田 「アクティブ対パッシブ」の議論は運用手法の違いであって、リスクを取って株式に投資してリターンを得ていることには変わりがありません。ただ、ここ数年でどんどんと増えている日本の個人投資家のみなさんは、インデックスファンド、投資信託を利用されているので、自分たちが買っているのは投資信託であって、「株に投資している」という意識があまりないかもしれません。

 みなさん、「株はリスクが高い」とは考えていても、「自分が取っているリスクとリターンが見合っているか?」までは思い至ってないように思います。ベイリー・ギフォード社では、リスクとリターンの関係をどう捉えているのですか。

小宮 株式投資において、リターンは魅力的な事業を生み出す起業家、経営者に資金を提供することによって得られるもの。そこにおいて、リスクとは一時的なボラティリティ(価格の変動)ではなくて、長期的に投資価値が下がってしまうこと、投資価値が毀損(きそん)してしまうことだと捉えています。

 また、個別企業の株価におけるボラティリティは、「市場のノイズ」であることが少なくありません。そういったノイズに惑わされないことが重要です。

篠田 ノイズとは、たとえばどういうことですか。

小宮 典型的な例は、ニュースやうわさが材料になって起こる株価の上下です。全体相場に影響するニュースもそうですが、一時的な企業や業界に関するニュースもノイズとしてみることができます。

篠田 では、ノイズに惑わされない投資とは?

小宮 弊社では5年先、10年先に企業がどのような姿になっているのかを想定して、そのシナリオに沿って、その企業の業績がきちんと進展しているのかどうかをモニタリングすることが重要と考えています。

 株価が企業業績に沿って動くことを、1年以内の短い期間で見たのでは証明することが難しいと思います。でも5年間という長期で捉えて、銘柄を利益成長の高い順番に並べていく。次にその銘柄の株価のリターンのデータを並べていく。すると、順番がきれいに一致する傾向にあります。

 このことは5年以上の長期では、利益の成長に沿って株価が動く可能性が高いということです。そこで我々は5年、10年先を見て、銘柄を徹底的に調査して、議論を行った上で銘柄を厳選し、成長性のシナリオをつくります。そして、シナリオ通りに成長を続けているかをモニタリングしています。