「脱炭素」は後戻りしない。物価高はしばらく続く

 ウクライナにロシアが侵攻する可能性があること、OPECプラス(石油輸出国機構プラス)が価格をつり上げていることなどは、確かに、エネルギー価格の上昇要因です。しかし、それが全てではないと、筆者は考えています。

 上記の個別の要因以外に、黎明(れいめい)期の「脱炭素」が、エネルギー価格を上昇させていると考えます(黎明期=夜明けの時間帯。物事のはじまり)。以下は、黎明期・過渡期の「脱炭素」が社会に与える影響です。

図:黎明期・過渡期の「脱炭素」が社会に与える影響

出所:筆者作成

 黎明期の「脱炭素」が、エネルギー価格の上昇に貢献している(してしまっている)ことがわかります。黎明期の「脱炭素」が、「電力価格」と「輸送コスト」を上昇させ、原材料価格全体を「底上げ」しているのです。

 上図の通り、黎明期の「脱炭素」は、エネルギー価格だけでなく、農産物、金属価格も押し上げているとみられ、「コスト・プッシュ型の物価高」を加速させていると考えられます。

 その黎明期の「脱炭素」は、その名のとおり、始まったばかりとみられ、まだ当分、「脱炭素」起因の物価高が続く可能性があると、筆者は考えています。

 人類が立てた「脱炭素」の期限は、パリ協定やSDGsを参照すれば、2030年から2050年です。「脱炭素」推進を全面に推し出したバイデン氏が米大統領選挙で勝利した2020年を元年とすると、2022年はまだ3年目です。

図:2020年の前後30年間の、社会情勢の変化(見通し込み)

出所:筆者作成

 まだしばらく、「脱炭素」起因のコモディティ価格の上昇は続き、それにより、さまざまな末端の品物・サービスの価格が、(景気の良しあしにかかわらず)上昇する可能性があります。

 このような状況の中、わたしたちはどのような心構えで「物価高」と対峙(たいじ)することが求められるのでしょうか。