(3)時間への投資的支出

 投資にあっても、後に触れる消費にあっても、人間がその効果を得るためには「時間」が必要だ。そして、時間はしばしばお金で買うことが出来る。

 小さい単位では、例えばタクシーを利用することで時間を節約し、生産的な時間をより多く持てるようになる場合がある。

 もう少し大きな単位を考えると、例えば、職住近接のロケーションにある住居に住むことの累積的時間短縮効果は極めて大きい場合がある。

 また、自分でやると時間が掛かる仕事を、お金を支払って他人に依頼するのも時間を買う行為の一形態だ。

「時間をお金で買える機会はないか?」、「その支出は時間をどれだけ作り、その時間の価値に見合うか?」ということは、ビジネスパーソンならもちろん、ビジネスパーソン以外の人も(例えば学生も高齢者も)頻繁に考えてみる価値がある。

 逆に、他人の時間を無駄に占有する行為は、精神的に迷惑を掛けるだけでなく、相手の経済価値を奪ってもいるのだ、という自覚が必要だ。

(4)人間関係への投資的支出

 人間関係も、人材価値に影響する重要な要素だ。例えば、何らかのセールスに関わる仕事をしていると、顧客を持っているか、顧客とどのような関係を築いているかは、その人の「能力」と「実績」の両方に関わる重要な構成要素だ。

 筆者の親しい知り合いに、主に外資系の金融の世界で数社を渡り歩きながら、67歳まで勤めた人がいるのだが(外資系の特に金融では、経営トップ層以外では異例の年齢だ)、彼の強みは広い顧客層との「顔のつながり」だった。この人的なネットワークに価値を見いだす企業(例えば日本に進出して日の浅い会社など)に時々転職することで、その人的ネットワークは経済価値を生み続けた。但し、重要人物との人間関係を維持するためには、時間と労力と、そして自ら使うお金も必要だった。

 普通の会社員であっても、人間関係に対する、時間と努力、そしてお金の投資は有効だし、必要な場合があるだろう。

 また、他人に対して使ったお金は、直接、間接、さまざまな形で自分に返ってくることがある。他人に使うお金は、自分に使うお金よりも「少し気前よく」と思っているくらいが、ちょうど良いのではないかと思う。

 投資的支出が有効な場合として、(1)能力、(2)知識・経験、(3)時間、(4)人間関係の4つがあることは、是非覚えておきたい。