「2022年」の全体的な方向性

 歴史的な社会的構造変化の3年目である2022年の、さまざまな事象の方向性について考えます。

 パリ協定で約束した、各国の温室効果ガスの削減目標の期限は、2030年から2050年くらいです。また、国連で策定された持続可能な開発目標「SDGs」は、2030年を期限としています。

 こうした環境や社会を改善する、長期的なプロジェクトの期限はまだ先です。そして、2020年を元年とすると、2022年は3年目であり、まだ序盤と言えます。このように考えれば、2022年は急激な変化が生じるよりも、2021年を踏襲する可能性の方が、高いと考えられます。

図:長期視点をもとに得られた、2022年も起き得る事象( ≒ 2021年)

出所:筆者作成

 上記のような、今年2021年に発生した事象が、引き続き、2022年でも発生する可能性があると、筆者はみています。

 また、2021年がどのような年だったのか(12月17日まで)を確認すべく、年平均ベースの騰落率に注目すると、以下の図のとおり、多くの銘柄が、2020年を上回っていることが分かります。

図:年平均ベースの騰落率(2020年vs2021年 2021年は12月17日まで)

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

 2022年に起き得る事象が、2021年を踏襲するのであれば、そうした事象からの圧力に影響を受ける価格動向も2021年を踏襲し、全体的な年平均ベースの上昇が、2022年も発生する可能性があります。

 では、そもそもなぜ、2021年に、全体的な価格上昇が発生したのでしょうか。黎明期・過渡期の「脱炭素」が、コモディティ価格を底上げした一因だったと、考えます。

図:黎明期・過渡期の「脱炭素」の影響

出所:筆者作成

 長期的には「脱炭素」も、社会(大小問わず)が「効率的消費・理性重視・格差是正・低リスク社会の模索」「新しい常識の創造」に向けて変化していく中で、いずれ、安定期に入り、世界に平穏を提供する要因になると考えられます。

 しかし、数十年を要するプロジェクトのまだ3年目であることを考えれば、安定期に入るのは2022年ではない、と言えるでしょう。

 つまり、「脱炭素」が2022年も、黎明期・過渡期である可能性がある以上、2021年と同様、「脱炭素」がエネルギーや金属、農産物価格を押し上げたり、さまざまなリスクを振りまき、資金の逃避先需要を拡大させたりする可能性があるわけです。