11月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 11月は、日本の新興株市場の在り方を考えさせられる展開だったといえそう。盛り上がる時は盛り上がるものの、その時の買い手のほぼ全てが短期売買を前提とした個人の信用買い。「マザーズが良さそうだ」というセンチメントが広がり、売買が増えてくると数珠つなぎ的に短期マネーは集まります。

 ただ、あくまで短期マネーですので資金が抜けるときも数珠つなぎ…ひさびさの活況ムードを示しながらも、その反動が月末にかけて、“大逆流”の形で現れた激動の1カ月でした。

 このタイミングで、「マザーズが良さそうだ」の雰囲気がひさびさ生まれた理由を振り返ると…まずは強い米国株の後ろ盾があったこと(とはいえ、相変わらず東京時間が弱く、日本株は割り負け)。11月FOMC(米連邦公開市場委員会)でのテーパリング決定後、これを織り込み済みとして消化した米国株の懐の深さには驚くばかりでした(主要指数が連日の最高値更新へ)。

 日本の個人投資家にとって大きかったのは、ソフトバンクグループが決算発表で1兆円枠の自社株買いを発表し、直後ひさびさに大きく上昇したことも挙げられます。

 また、これは前月から予兆はありましたが、人気銘柄の一角(直近IPO(新規公開株)のアスタリスクや、令和の仕手株グローバルウェイなど)にだけ短期マネーが集中する現象…これが意外に長続きしたことで、短期で高いリスクを取るタイプの資金が膨張していきました。

 このリスクマネー膨張が潤滑油となって他の銘柄に流れ、方々でマネーゲームが発生し始めた雰囲気でした。例えばこの時期、11月12日が決算発表のピークでしたが、マザーズ銘柄にとって鬼門の決算発表シーズンでもありました。

 そんなリスクマネーが決算数値でサプライズがあった銘柄や、株式分割を発表した銘柄に普段以上に買いが殺到。ストップ高買い気配を2日続ければ、3日目は上限値幅が4倍になります。これを狙って買いに並ぶような異様さがありました。15日にマザーズの売買代金が2,000億円を超えましたが、これは実に3カ月半ぶりのこと。ピークは25日の2,663億円でした。

 ただしこの熱狂も、起点となっていた人気銘柄の急落で暗転。そのタイミングで新変異株「オミクロン型」の出現もあり、月末にかけて下げは加速。

 月前半の上昇分を帳消しにし、マザーズ指数の11月月間騰落率は▲3.3%でした。その他の指数では、日経平均株価▲3.7%、TOPIX▲3.6%、日経ジャスダック平均▲2.5%と全部安。11月後半から株価が強くなるという過去の経験則は有名ですが、意表を突いた変異型出現には通じず…。