コンビニから店員が消える?

 新型コロナ感染拡大が引き起こした大量失業に対する政府の雇用対策は、「失業は一時的なものであり、経済が再開すれば元に戻る」という想定に基づいて、失われた所得を補うことに焦点を当てています。

 しかし、この考えは間違っているでしょう。なぜなら経済が再開しても、全ての業種で雇用が以前の状態に戻ることはない。失業は不況が原因ではなく、雇用の構造変化が生み出したものだからです。

 雇用の構造変化は、すでにコロナ前から始まっていました。その象徴ともいえるのが米アマゾンの無人コンビニで、「Amazon Go」がオープンしたのは2018年1月。日本でも同様の試みが2020年1月ごろにスタートしています。

 コロナ前までは無人店舗やレジなし決済システムが、対面式を大切にする日本の慣習に合わないと懐疑的な声も多かった。しかし直後に発生したコロナ感染大流行(パンデミック)によって、コンビニで現金を手渡しすることや店員と直接会話することが感染「危険行為」とみなされるようになった。

 新しい行動スタイルに合わせた雇用の構造変化は避けられないことでした。人手不足を解消することが目的だった無人コンビニですが、もはやそこで止まることはなく、人間の仕事をほぼ全て奪うまで広がっていくでしょう。

 しかし、このような変化は、新型コロナが発生しなかったとしてもいつかは起きたことで、ある意味健全な進化だといえます。しかし問題は変化のスピード。5年必要とするような変化が、新型コロナのせいで1年のうちに起きている。

 経済システムは長い時間をかけた変化には対応できますが、このような急激な変化は歴史上経験したことがなく、その結果さまざまな問題が起きているのです。

 先進国の雇用市場の特徴は、労働不足と労働余剰の共存だといわれています。雇用の構造変化が急激であるため、適さない仕事や地域にいる人が多く存在している。人が減ったビジネス街のコーヒーショップは多すぎるのに、リモートワークの普及で人が増える地域ではコーヒーショップは少なすぎるといった問題が起きています。