パウエル議長の変節

 週明け月曜日は、東京市場は売られたものの、欧米市場では先週の売られ過ぎの反動で買い戻されていますが、過度の懸念は和らいだとはいえ、オミクロン株のデータがまだ不明なため先行きの不透明感から大きく買い戻されるという動きではありませんでした。

 ただ、各国の水際対応は早いため、感染スピードが抑えられれば、先週の動きは一時的な動きとなる可能性はあります。

 もしそうなれば、ポジション調整一巡後は、再び来年の利上げシナリオにそった動きになるかもしれません。

 逆に、各国の対応の早さ以上にオミクロン株の感染拡大が速まれば、一気に消費者心理は冷やされ、世界経済の停滞懸念から来年の利上げシナリオは、後退するシナリオが浮上してくる可能性があります。

 ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は30日の議会証言で「最新の新型コロナ感染者の増加とオミクロン株の出現は雇用と経済に下振れリスクをもたらし、インフレの不確実性を高める」と警戒感を示しながらも、「テーパリングを想定より数カ月早く終了させることが望ましい」と述べ、次回12月14~15日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で議論の対象になると述べました。

 また、「高インフレは『一時的』だとしてきた表現を撤回するのが適切な時期かもしれない」と述べ、従来の姿勢を変えることも仄めかしました。

 オミクロン株が出現したにもかかわらず、パウエル議長がタカ派に変節したことを受けて、ドル/円は112円台後半から113円台後半まで上昇し、株は下落し金利も上昇しました。しかし、株安を受けて長期債利回りはその後下落したため、ドル/円は113.10円近辺まで下落しました。

 この議会証言によって12月のFOMCでのテーパリング加速の期待が高まりましたが、それまでのオミクロン株の感染状況によってはFOMCの議論も慎重になる可能性も想定されるため、柔軟に臨む必要がありそうです。