Q:企業の利益は、企業活動がいわゆる拡大再生産をすることから生まれるのではないでしょうか。だとすると、経済が成長しないと株式にはプラスのリターンが無いように思いますが、ちがっていますか?

A:(だんだん難しくなってきたけど、質問自体の前提に穴がありそうです)

 利益は、大雑把に言うと、売り上げから費用を引いたものです。「経済人」にとって、利益が無いことは、行いたくない。

 さて、「資本」というものを抽象的に考えると、「資本とは、価値を増やしていく終わりなき運動である」(斎藤幸平「人新世の『資本論』」、p132)のように、生産を拡大していかないと資本が維持できないようなイメージを持ちがちですが、実際には、たとえば需要が縮小して売り上げや儲けが減ると思えば、資本家は、資本(ビジネスの元手として使うお金)を縮小します。

 そして、減っていくとしても、予想される将来の利益はあるので、それに対する請求権としての株式には価値があります。

 拡大再生産しなくても、資本主義は存続しますし、株式には価値があります。なかなか、しぶといシステムなので、投資家さんは、安心して下さい。

Q:経済がマイナス成長でも、株式にリターンは期待できるのでしょうか? 成長しなくても、株式にはリターンが見込めると言われても、違和感があるのですが。

A:(これは、割合よくある質問です)

 経済や企業の利益がマイナス成長であることが予想されていても、その予想が市場参加者の間で共有されていると、マイナス成長に見合った(低めの)株価が形成されます。この株価に投資する時の期待リターンは、高い成長が予想されていて高い株価が形成されている時に高い株価に対して投資するリターンとどちらが高いかは何とも言えません。

 低成長でも、株価が適切に形成されていれば、株式投資としてのリターンが期待できます。

 もちろん、経済成長自体が株式のリターンにとってネガティブだと言いたいわけではありません。それどころか、「過去に予想されていたよりも、成長予想が改善した場合」には大きな株価上昇が期待できます。

 但し、それは、もともと高成長が予想されていた場合も、低成長が予想されていた場合も、同様です。

 少なくとも、成長率の「絶対値」で、株式のリターンを判断しない方がいいでしょう。