恒大集団の影響はまだまだ続く

 21日、OECD(経済協力開発機構)は最新の経済見通しを公表しました。今年の世界の経済成長率予測は+5.7%と、5月下旬の前回予測から0.1%下方修正しました。

 米国は今年+6.0%と、前回予測から1%近く下方修正しましたが、中国は今年+8.5%、来年+5.8%と、ともに前回予測から変わらずでした。

 OECDのチーフエコノミストによると、中国の不動産開発大手、中国恒大集団の債務問題について、中国政府には危機を抑制する力があり、全体への影響は限られるだろうと指摘し、「中国当局には、ショックを和らげる財政・金融面の力があると考えている。明らかに特殊な企業を除けば、影響はかなり限定的だろう」と述べています。

 一方で、この予想と逆の見方もあります。28日、「香港経済日報」は、ゴールドマン・サックスは最新リポートで2021年の中国GDP(国内総生産)見通しをこれまでの前年比+8.2%から+7.8%に引き下げ、2022年については+5.5%の予想と伝えました。

 中国恒大集団の債務問題を巡る政府の対応や、環境保護措置、政策緩和の度合いはいずれもはっきりしておらず、2021年10-12月期も経済成長の不確実性が続いていると分析しています。

 また、政府によるエネルギー消費の高い産業への大規模な電力供給の制限で経済成長の下押し圧力が強まったとし、2021年7-9月期のGDP成長率見通しを前四半期比+1.3%からゼロに下方修正したとのことです。

 このように、恒大集団の影響はまだまだ見方が分かれており、今後の中国経済の不透明感は増すばかりです。中国のさまざまな規制強化や電力供給制限で中国経済が停滞すれば、世界経済にも影響を与えることが予想されます。

 そうなれば、米国景気回復伸び悩みの一因となり、米金利上昇も鈍くなることが予想され、ドル/円の上昇も限定的になるシナリオが予想されます。

 一方で、米国を襲ったハリケーンの影響で原油の需給逼迫(ひっぱく)感が強まっていることや欧州の天然ガスの高騰、中国の電力供給制限による操業停止などによるサプライチェーンの混乱などによってインフレ長期化の懸念材料がくすぶっています。

 28日、パウエル議長は米議会上院の議会証言で、「インフレ率は上昇していて、今後数カ月間はこの状態が続く」と述べました。さらに、インフレが深刻な懸念となる場合には「確実に対応し措置を講じる」と強調しています。

 もし、インフレが長期化すれば、長期金利は高止まりする可能性もあるため、ドル/円のレンジ水準が切り上がることもシナリオとして想定しておく必要がありそうです。