輸入LNG価格は、原油価格の半年あとをたどる。海外の天然ガス価格にも注目

 電力需要を拡大させるさまざまな社会的要素が存在する中、日本政府が検討している「2030年度までは火力発電をゼロにしない」方針により、2030年度までに、日本の火力発電のメインがLNGになる可能性があると書きました。

 ここからは、日本が輸入に頼るLNGの価格について、述べます。以下は、先述の日本の輸入先ごとの、輸入量・輸入総額から算出したLNGの輸入価格です。WTI原油先物の推移を併記しています。

図:液化天然ガス(LNG)の輸入価格と原油先物価格の推移

出所:財務省貿易統計とブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 算出したLNG輸入価格は、2021年7月時点で1トンあたりおよそ5万5,000円です。2019年8月に近い水準まで反発しています。全体的には、LNG輸入価格は「原油価格の半年あと」をたどっていると、言えます。

 原油価格と似た動きになるのは、価格決定の仕組みがそうなっているためです。原油価格リンク方式と呼ばれ、アジアや一部の欧州諸国で採用されています。(欧米では天然ガス自体の需給で決まるハブ方式で価格が決まっています)

 今から半年前の原油価格は1バレルあたり60ドル前後でした(WTIベース)。レポート執筆時点(9月下旬)では75ドル前後です。

 この半年間、原油価格が上昇し続けたこと、そして、LNGの輸入価格が原油価格の半年あとをたどる傾向があることを考えれば、短期的には、今年の冬場の電力需要期は、LNG輸入価格が今よりも(比較的大きく)上昇している可能性があります。

 また、参考までに、米国の天然ガス先物価格の動向と見比べてみます。

図:液化天然ガス(LNG)の輸入価格と米天然ガス先物価格の推移

出所:財務省貿易統計とブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 2013年ごろ以降、主に米国国内の需給動向で決まる米国の天然ガス先物価格が低水準から反発した局面で、日本の輸入LNG価格も同様に、反発色を強めていることがわかります。

 価格決定方式が異なるとはいえ、「エネルギー」「天然ガス」という共通項が存在するため、連想的な価格反発が起きているのかもしれません。