なぜあえて、リスクの数をかぞえなければならないのか?

「リスクの数をかぞえる」…このことは、今世界で起きていることを直視することに他なりません。「見たくないものをあえて見る」と、言い換えることもできるでしょう。

 暗いニュースは見たくない、明るいニュースが見たい、ハラハラせずワクワクしたい…投資家でなくても多くの人は、そう考えていると思います。

 しかし、リスクの数をかぞえなければ、それを一つの材料として動く各種市場を分析することはできません。株式、為替、コモディティ(商品)、暗号資産など、どの市場でもそうです。

 明るくワクワクするニュースだけ(見たいニュースだけ)を探し求めていては、相場の動向を見誤ってしまいます。

 日頃より、相場分析の際に真っ先にするべきことは、市場環境を俯瞰(ふかん)すること(全体をまんべんなく見ること)ですが、今のように、リスクが世界中で同時多発している時は特に、リスクの数をあえて、かぞえることが重要です。

 同時に、リスクの動向が大きな変動要因になり得る金(ゴールド)相場の今後を考えるにあたり、足元、興味深いタイミングに差し掛かっていると筆者は感じています。

 米国で段階的に金融政策を引締めることを指す「テーパリング」の議論が目立ちはじめたことを背景に、複数の専門家は「金相場は下落する」と述べましたが、今月初旬の安値から、大きく反発しているのです。

 本レポートでは、リスクの数をかぞえながら(市場環境を俯瞰しながら)、複数の専門家が下がると述べた金相場が今後、上昇する可能性があることについて、筆者の見解を述べます。

 悲観の中に一縷(いちる)の望みがある、いわば、世界がリスクであふれていても、上昇が期待できる投資商品があるかもしれない、そのような心づもりでお読みいただければ、幸いです。

図:各種銘柄の騰落率(8月9日と20日)

出所:ブルームバーグのデータより筆者作成

図:今、世界はリスクにあふれている

出所:筆者作成