デルタ型まん延は米国社会でさらに深刻化

 7月のドル/円は1ドル=111円台で始まったものの数日しか維持できず、その後は109.50円~110.50円のレンジで動いていましたが、いよいよこのレンジが下方にブレイクしそうな気配が漂ってきました。

 8月に入って発表されたISM(米サプライマネジメント協会)非製造業景況指数と米雇用統計が良好だったため、再び110円台に突入しましたが、110円台半ばを超えられず失速し、先週13日(金)に発表された8月のミシガン大学消費者信頼感指数(*)で一気にドル全面安となりました。

 ミシガン指数は前月比▲11.0の70.2と、2011年12月以来、10年振りの低さにマーケットは驚きました。10年振りということは、昨年のパンデミック発生時の水準よりも低いということになります。

 指数の調査員によると、新型コロナウイルスのデルタ型の感染拡大によってパンデミックが間もなく収束するという消費者の期待が打ち砕かれたということですが、かなりデルタ型まん延は米国社会の中で深刻化してきているということかもしれません。

(*)ミシガン大学消費者信頼感指数(University of Michigan survey)

  • 米国の消費者マインドを表す経済指標で、ミシガン大学のサーベイ・リサーチセンターが毎月発表し、「ミシガン大学消費者態度指数」とも呼ばれています。
  • 調査は速報値が300人、確定値が500人を対象に実施。「景況感」「雇用状況」「所得」に関して、「楽観」「悲観」で回答し、1966年を100として指数化されます。毎月第2または第3金曜日に速報値が、最終金曜日に確定値が発表されます(米国東部時間10:00)。
  • もうひとつの代表的な指標であるコンファレンス・ボード(CB)が発表する消費者信頼感指数と比べ、対象人数が少ないため(CBは5,000人)月ごとの振れ幅が大きくなっています。ただ、発表のタイミングが早いことから、先行指標としてマーケットでは注目されています。今回も確定値発表で修正される可能性もあるため注意が必要です。
  • 指標が予想より強ければ米国経済は好調とみなされドル買い、逆に弱ければ不調とみなされドル売りというのが、基本的な反応になります。

 ドル/円は、このミシガン大学消費者信頼感指数発表後、109円台半ばで先週を終えましたが、今週に入って109円台前半~半ばで推移しています。

 また、8月10日現在のIMM(シカゴ・マーカンタイル取引所:CMEにある国際通貨市場)の円のネット・ショートは、再び増加してきています(▲6万657枚、前週比▲5,467)。円売りポジションが増えてきた中でのドル安・円高だったため、このままドルが上がらないとこのポジションは、いずれドル売り・円買い圧力になってくるかもしれません。

 クロス円も上値が重たい状況が続いています。今後、クロス円のさらなる下落が伴うとドル/円の円高が進み、レンジも107円台~109円台に移っていく可能性が高まってきます。