所有する不動産の売却の場合はどうなる?

 FIRE生活を送る方の多くは、不動産の賃料収入を生活費に充てるものと思います。株式の売却益を見込むのはかなり不確定ですが、賃料収入であればかなり安定しており、FIRE生活のプランニングが立てやすいからです。

 それでも、時には所有する不動産を売却するケースもあり得るでしょう。

 特に都心部の不動産を保有しているような場合、価格高騰により大きな売却益を見込めるのであれば売却し、別の物件に投資したり、不動産市況が落ち着いて価格が低下するのを待つ、という戦術も考えられます。

 不動産の売却益(譲渡所得)に対する税金は、不動産の所有期間により異なります。具体的には、売却する年の1月1日時点で所有期間が5年超か5年以下かにより変わります。

所有期間 不動産の売却益(譲渡所得)に対する税金
5年超 長期譲渡所得として、所得税15.315%+住民税5%=20.315%
5年以下 短期譲渡所得として、所得税30.63%+住民税9%=39.63%

 令和3年中に売却するのであれば、平成27年12月31日以前に取得したものは長期譲渡所得、平成28年1月1日以後に取得したものは短期譲渡所得となります。

 所有期間に応じて税率が2倍近く異なるといった点も考慮して、手取り収入がどのくらいになるか事前にシミュレーションした上で、売却するか検討するようにしましょう。

 なお、売却により損失が生じた場合は、税金はかかりませんが、上場株式や投資信託のように、損失を翌年以降繰り越すことはできません。

暗号資産を売却するときは十分な注意が必要!

 FIRE生活を送る方の中には、暗号資産を保有している方も多いのではないでしょうか。何年も前から暗号資産を保有していれば、それだけで資産1億円を軽く上回る…ということもあるでしょう。

 この暗号資産の売却は、上記の株式・投資信託や不動産の売却と大きく異なりますので、十分な注意が必要です。

 それは、暗号資産の売却益は雑所得に分類され総合課税になるという点です。つまり、所得の多寡により税率が異なってくるということです。

 例えば、暗号資産の売却益に、他の総合課税の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)を加えた課税所得が300万円の場合、税金は約51万円、税率にすると約17%です。

 しかし、課税所得が1,500万円の場合の税金は約499万円となり、税率は33%にはね上がります。

 課税所得が5,000万円であれば、税金は約2,308万円、税率46%にも上ります。

 したがって、暗号資産を売却する場合、必要以上に売却して売却益がふくらむと、思わぬ多額の税金が課税されることになってしまうため、十分な注意が必要です。

 もちろん、税負担を過度に意識して、売却すべきタイミングを逸するということは避けたいですが、例えば売却しようとしているのが年末であれば、「その年に売却したい数量の半分、翌年に残り半分」とすれば一度に全額を売却するより税負担は減らせる可能性があります。

 なお、暗号資産の売却により損失が生じた場合は、課税はされません。

 ただ、損失は雑所得の損失に該当し、給与所得や事業所得、不動産所得などと損益通算することはできません。翌年以降に繰り越すこともできず、切り捨てになってしまいます。