感染再拡大と世界経済後退リスク                     

 先週はドル高円高の動きでした。注目されていた米国の物価指標がCPI(消費者物価指数:前年比+5.4%)、PPI(生産者物価指数:同+7.3%)とも予想も前月も上回りましたが、ドル/円は上昇しても1ドル=110.70円近辺止まりで111円には届かず、むしろ110円割れとなりました。

 16日(金)の米小売売上高も予想を上回ったため、ドル/円は一時110円台に反発しましたが、110.円台前半が精一杯で110円台後半には戻ることができませんでした。その後110円手前まで下げ、頭の重い地合いで越週となりました。

 そしてドル高円高の動きはクロス円の円高となり、クロス円が軒並み下落し、ドル/円に円高圧力をかけました。

 先週は、NZ中銀が定例理事会で債券買い入れを7月23日から停止すると予想外の決定をしました。この決定によってNZドルは急伸し、NZドル/円も上昇しましたが、翌日にはその影響も消化してしまったようです。予想外のNZ中銀の量的緩和縮小の発表にもかかわらず、その影響を一日で消化してしまうほどクロス円全般の下落圧力が強い週でした。

 ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円は3週連続の陰線*となっており、今週20日はNY株の反発とともにクロス円も買戻しがみられました。しかし、この陰線の地合いは、まだしばらくは続きそうな気配です。

*陰線…始値よりも終値が安いこと。週足の陰線とは週の終値が週の始値よりも円高で終わること

 米国物価は予想を上回りました。しかし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、14日の議会証言で物価上昇は「一時的」との従来の姿勢を強調しながらも、長期化するリスクを述べたことから、マーケットはある意味で安心感を得たのかもしれません。物価指標の発表後、米国株は上昇し、米長期金利は低下しました。

 しかし、米国株は今週に入って、新型コロナウィルスの感染再拡大への警戒から売りが強まり、NYダウは19日に、一時900ドルを超える下げとなり、9カ月振りの下落幅となりました。米長期金利も一段と低下し、米10年債利回りは1.2%を割れました。1.2%割れは今年2月の水準です。

 6月後半には1.5%前後で推移していた米10年債利回りが、7月に入って急低下していることは、ドル/円の頭を抑えている要因のひとつになっているようです。