感染者増加中、各国主要閣僚も自主隔離へ

 米国株急落の背景にある、新型コロナウィルスの感染再拡大による景気後退懸念は欧州にも広がってきています。加えて欧州では、ドイツ、ベルギーの洪水被害の影響も懸念され、欧州株が下落し、ユーロの頭を重たくする要因となっています。

 また、英国では、19日に規制をほぼ全て解除しましたが、感染者は増えています。英政府は重症者や死者が抑制されているため「コロナとの共生」という賭けに出たようです。ところが、解除直前の17日、英国のジャビド保健相がPCR検査で陽性のため自主隔離していると公表しました。ジョンソン首相も濃厚接触者と判定され、自主隔離とのことです。

 主要閣僚が自主隔離に入る事態となっている中での規制解除となりましたが、市民任せの規制解除の方針には批判も多く、この先の英国の動向には注視する必要があります。

 新型コロナウィルスの感染再拡大は、感染力の強いデルタ株の勢いが増していることも懸念材料ですが、同時に懸念されているのが、経済がピークを迎えたのではないかという見方が強まってきていることです。

 これまで世界経済を牽引してきた米国と中国の経済成長が、ピークを過ぎたのではないかという見方です。昨年の反動による需要急回復が一段落したことや、経済対策の効果が一巡したことなどによって、ピークが過ぎたかもしれません。もし、そうならば、金融緩和は長期化し、金融緩和が長期化しても株は上がりづらく、米長期金利は低い水準が続く可能性があります。

 特に中国経済が気になります。コロナと無縁の中国経済はもっと元気になってもよいはずですが、もたもた感が強い中で、規制強化など国内企業の経済活動の足を引っ張るような政策もみられます。中国の人口増加率が鈍化し始めており、中国の若者に広がっている「寝そべり族」**に象徴されるように中国の国運のピークは過ぎたのでしょうか。

**「寝そべり族」…競争に疲れ、最小限の仕事しかしない生き方を選ぶ若者たちのこと。お金がなくなれば1年のうち1〜2カ月仕事をするが、ふだんは家で寝そべり、外で寝そべる。猫や犬のように寝そべっている生活スタイルに、中国当局は経済発展を阻む要因になりかねないとして懸念を強めている。

 米中経済がコロナ後の世界経済を牽引するというこれまでの構図から、米国が引っ張り、中国が世界経済の足を引っ張るという構図に変わる可能性もあり、注視したいと思います。

 その米国経済好調の象徴である住宅の各種指標が今週発表されます。指標結果によっては、MBS(住宅ローン担保証券)のみテーパリング開始、という議論が高まるのかどうか、あるいは、世界経済減速の警戒感が浮上してきている中で、どのように議論されていくのか注目です。