7月に注目したい新興株の動き

 ハイボラ直近IPOでの超短期ギャンブルトレード―これはしばらく続くでしょうが、初値が付く直後など、とくに個人マネーが向かう「上場日」の銘柄が減る点では一安心。怒涛(どとう)の6月IPOラッシュを通過、7月もIPOは9銘柄予定されているとはいえ「1日1社ペース」の平常スケジュールです。そう思うと、6月のスケジュールは異常でしたね。

 資金が分散することで、「今日はこっち、明日はあっち、だからこっちはポイ」といった脈絡ない動きは減るでしょうが、かといって低調な新興株市場全体の売買ボリュームが増すとも言えない状況。全体的に流動性が低めな中、流動性が抜群に高い数銘柄に資金が集中する傾向は続きそうです。

 目下では、6月IPOの日本電解ですが、日本電解一強が続くのか? モメンタムが途絶えて別銘柄へ資金移動するのか? に関心が向かいます。

 短期の資金でいえば、7月は東京五輪が開幕するようなので、一時的にアフターコロナ株(リオープン株)が盛り上がる場面もありそう。ただ、東京都中心にコロナの新規感染者数がまた増加、自粛生活も長引きそうななか、アフターコロナ株が分かりやすくフィーバーするとも思えないところ。物色テーマに関しても、短期でコロコロ変化しそうです。

 イメージが湧きにくい7月相場ですが、6月に起きた「マザーズ指数の大きめ上昇」を分析すると見えてくるものがあります。6月はマザーズ市場の売買代金が前月比で減少しましたが、それでもマザーズ指数は月間5.0%の上昇率を記録しました。これは珍しいことです。では、なぜマザーズ指数が上昇できたのか…?

 6月はマザーズ銘柄のうち、月間で上昇した銘柄数が182、変わらずが3、下落した銘柄数が167でした。騰落銘柄数的にはある程度拮抗(きっこう)していた割に、指数は高い上昇率となったわけです。

 その理由は、時価総額ワンツー(指数ウエートもワンツー)の主力大型株の大幅上昇で説明が付きます。まず、時価総額トップで指数ウエート11.6%のメルカリ。メルカリが6月は13.7%上昇し、これだけでマザーズ指数を1.6%押し上げました。

 そして、時価総額2位で指数ウエート7.0%のフリー。フリーも6月は23.5%と大きく上昇、これでマザーズ指数を1.6%押し上げました。メルカリとフリーの2銘柄で、マザーズ指数5%高のうちの64%に相当する上昇寄与があったわけです。

 その6月、マザーズ指数は月間で5.0%上昇したとはいえ、大きく上がった週は6月第2週(+5.6%)だけ。この週のマザーズの投資部門別売買動向を調べると、個人は87億円売り越し、国内機関投資家も39億円売り越しだったのに対して、海外投資家が112億円買い越しでした。

 この週にメルカリは週間+4.5%、フリーが同+15.7%になっていますので、指数をけん引した銘柄を買い上がったのは海外勢だったことが判明します。

 では、なぜ買ったのか? となるわけですが…この週にあった出来事をさかのぼると、6月11日に、コーポレートガバナンス・コードの改訂と施行を東証が発表していました。決定事項で注目されたのが、市場再編後の最上位市場「プライム」に対するルール。今回、プライム上場企業に対しては、独立社外取締役を3分の1以上選任すること―などが決まりました。

 と、考えると…来年4月に控える東証の市場再編というビッグイベントを前に、これを契機に“最上位市場”へステップアップしそうな企業の“先回り買い”の動きが出てきているのかもしれませんね。新市場区分に適しているかを判定する基準日が6月30日でした。その時点の状況を見て、東証が7月9日に適合市場を企業サイドに通知するようです。

 プライム上場基準には、「流通株式」という新しい概念が設けられています。大株主が保有している株のうち、投信保有分や、銀行や事業会社など国内機関投資家が“純投資”で保有する分は流通株式にカウントされます。

 一方で、10%以上保有する主要株主の持ち分や、役員などの持ち分、銀行や事業会社などが保有する“政策保有株(=持ち合い関係の株のこと)”はカウントされません。

 その流通株式の比率が「35%」必要で、かつ、流通時価総額で「100億円以上」がプライムの上場基準となっています。この基準を既に満たしているマザーズ銘柄は、メルカリ、ジーエヌアイ程度。ジャスダックでは、フェローテック、メイコー、ナカニシ、マクドナルド、セリアなど複数あります。

 プライムを目指すかどうかは、会社側がどこの市場に申請するか次第ですが、基準を満たしていれば当然プライムを選ぶはず。新たな指数の組成を契機とした機関投資家マネー流入、これを見据えた大型新興株の先回り買いに注目!