米国はワクチン接種率が高い。隣の芝生の青さが、金・プラチナ投資のヒント

 ここまでは、「虫の目」を捨て、「鳥の目」になり、複数の材料を俯瞰することが、「現代の金相場」の動向を考える上で欠かせないと書きました。また、具体的な複数のテーマ(材料)について、触れました。

 ここからは、材料ではなく、「投資対象」を俯瞰したいと思います。このように考えたのは、当社で毎月実施している、個人投資家の皆さまにさまざまな質問にお答えいただく投資家サーベイ「楽天DI」のデータに、印象的な動きが見られたためです。最新の楽天DIはこちらからご覧いただけます。 

 今後の日経平均株価やドル/円などの主要銘柄の動向をどのように考えているかを問う質問や、時節に合わせた親しみやすい月替わりの質問、さらには、「今後、投資してみたい国(地域)」「今後、投資してみたい金融商品」という質問もあります。

 今回注目した「今後、投資してみたい国(地域)」という質問は、複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。なお、5月に実施した調査の回答数はおよそ6,300でした。

図:今後、投資してみたい国(地域) ※月次投資家サーベイ「楽天DI」のデータより

出所:月次投資家サーベイ「楽天DI」のデータより筆者作成

 5月の調査で、今後投資してみたい国(地域)の選択肢のうち、最もたくさんの投資家の皆さんに選ばれたのは「アメリカ」でした。なんと73%でした。10人中7人以上が、アメリカを今後投資してみたい国に選んだわけです。一方、日本は30%でした。

 この数カ月間目立っている「アメリカ上昇・日本低下」の背景には、何があるのでしょうか。この数カ月間、という期間的な要素をもとに考えたとき、筆者の頭の中に、あるアイデアが浮かびました。この数カ月間、アメリカ優位・日本劣位が鮮明になっているのは、ワクチンの接種率です。

 以下は、Our World in Dataが公表しているデータを用いて計算した、ワクチン接種率です。少なくとも1回、新型コロナのワクチンを接種した人の数をその国の人口で除した値です。2021年6月24日(木)時点で、アメリカが54%、世界全体が23%、日本が20%、インドが18%でした。

図:ワクチン接種率 (少なくとも1回接種した人)

出所:Our World in Dataのデータより筆者作成

 ワクチン接種率は、人々の安心感と景気回復期待を増幅させる、さながら「安心感・景気回復期待増幅器」と言えます。足元、この増幅器が期待通り効率よく稼働しているか、そうでないかが、質問「今後投資してみたい国・地域」の結果を左右する一因になっていると、筆者は考えています。

「人々の安心感」という点で言えば、ワクチン接種率が比較的高いためアメリカでは、人々の間で安心感が広がりやすく、そうでない日本は相対的に安心感が広がりにくい(むしろアメリカに後れをとっているという意識によって不安感が広がりかねない)、と言えるでしょう。

 また、「景気回復期待」という点で言えば、ワクチン接種率が比較的高いためアメリカでは、景気回復期待増→株価上振れという構図になりやすく、米国株の動向に追随する傾向がある日本の株価も上振れする可能性があると考えられます。(ワクチン接種率の相対的な低さが、日本の株価下落の要因にはならないと、筆者は考えています)

 このように考えれば、日本の個人投資家の皆さまは今後も、「一定の不安を抱えながら、株価上昇の恩恵を享受する」可能性があると言えます。不安と株価上昇、この2点が同時に存在する時、どのような投資戦略が考えられるでしょうか。