課題となる利用範囲の拡大と、分かりやすさのバランス

 iDeCoと企業型DCについては「分かりにくさ」があります。

 特に、iDeCoは拠出限度額が働き方によって異なり、複雑な体系になっています。できるだけ多くの税制優遇を付与したいという願いの表れですが、「誰でも年40万円」というつみたてNISAのシンプルさには、かないません。

 しかも、次の法改正施行では、さらに限度額が複雑化します。企業型DCの掛金額、確定給付型企業年金の掛金額によっては、iDeCoの枠が一人ひとり違ってくることになります。

 複雑な限度額管理は、加入を敬遠する動きになる懸念もあり、また手続きも増やす面倒くささもあります。転職、退職のたびに、変更届を出す必要があるからです。

 それでもなお、iDeCoの魅力は大きいものがあります。掛け金に対する全額所得控除を得られるメリットはNISAにはないからです(受取時課税があるものの、非課税枠があるか、現役時代より税率が下がるため低率の課税で済み有利)。

 だとすると、さらなる利用範囲の拡大(例えば、企業型DC加入者がiDeCoにも同時加入できるようになる)をしつつも、制度の分かりやすさについて、どう国民にアピールしていくかが問われていくことになりそうです。

 米国では401(k)プランとIRAの普及が、国民の老後資産形成に強力な厚みをもたらしました。経済的に余裕を持ったリタイア層の誕生は社会の安定にも寄与し、経済的にも豊かな消費者層として活躍し続けます。

 同じことは日本の確定拠出年金制度にも期待されています。制度発足から20年を迎え、まだまだ発展途上のステージにあるこの制度が、おそらく数十年先の老後の安心を形作る翼となることは間違いないでしょう<このシリーズは月1回で続きます>。

DC(確定拠出年金)20年史(その2)