企業型DCは十分な普及規模、企業年金の一翼をしっかり担う

 さて、普及規模について見てみると、企業型の確定拠出年金については、十分な規模を確保したといえます。過去について振り返れば、適格退職年金と厚生年金基金がそれぞれ1,000万人を達成していますが、その受け皿となった確定給付企業年金は2021年3月末時点の数字で約946万人となっています。

 確定給付タイプの2制度を引き継いだ受け皿としては加入者数が半減している格好ですが、企業型DCの加入者を加えることで、普及率がなんとか維持されている格好です。

 当時は批判が多かったものの(いや本当に多かった!)、確定拠出年金がなかったら、日本人の老後資産形成の不安は今よりも大きなものとなっていたはずです。

 企業型の確定拠出年金は、中小企業でも大企業でも普及が進んでおり、多くの会社員の資産形成を支えています。次の10年は、確定給付企業年金の加入者数を超えられるかどうか、1,000万人を企業型のみで達成し得るかが目標となってくるでしょう。

iDeCoの進展著しいが、つみたてNISAには及ばず

 iDeCoについては、この「iDeCo」という愛称そのものが大きな転換点となりました。

 なにせ2002年1月にスタートしてから、2016年3月末までかけて約25.8万人しか利用者がいなかった「個人型確定拠出年金」という制度が、キャッチーな愛称と加入資格の規制緩和の実現により、多くの利用者を獲得するステージに入ったからです。

 2018年3月末の数字が約85.4万人ですが、規制緩和前の14年間分の加入者数をたった2年で3倍にしたことになり、絶大な効果があったことが分かります。

 さらにその後3年で倍増、2021年3月末には約194万人と200万突破を目前とするところまできています。規制緩和については、政策の意図がずばりハマったわけで、ここは大きく評価したいところです。

 一方で、任意加入である類似の制度として「つみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)」と比べてみると、2018年1月スタートであったこちらは、わずか3年で300万口座を獲得しています(2020年末、約302.9万口座)。

 この「300:200」という数字の違いは、まさにiDeCoの課題を浮き彫りにしています。