米国株は業績相場に移行する過渡期にある可能性

 米国株式が「金融相場(流動性相場)から業績相場に移行する過渡期にある」との見方があります。

 実際、経済見通しや業績見通しは改善傾向です。民間エコノミスト予測(市場予想平均)によると、2020年に▲3.5%となった米実質GDP(国内総生産)の伸びは、2021年に+6.3%、2022年に+4.0%と回復・拡大に転じると見込まれています。

 コロナ危機に応じた金融緩和、財政出動、ワクチン接種の効果を受け、景気回復は製造業に続き非製造(サービス業)に幅広く及ぶと予想されています。こうした経済活動の正常化期待を受け業績見通しも改善傾向です。

 図表3は、S&P500指数ベースの12カ月先予想EPS(1株当たり利益:市場予想平均)の推移を示したものです。2020年春のパンデミック・リセッション(コロナ危機を受けた景気後退)で予想EPSは大きく落ち込みました。

 ただ、景気後退(マイナス成長)は比較的短期で収束し、需要回復、財政出動効果、ワクチン接種進展で先行きの景況感とガイダンス(業績見通し)の改善が進み、現在の予想EPSは前年同期の予想EPSに対し+45%の188.86に増加。4月以降は史上最高水準を更新していることがわかります。

<図表3:米国市場の業績見通し改善は「業績相場」入りを予兆>

出所:Bloombergより楽天証券経済研究所作成(2016年~2021年5月7日)

 業績見通しが一段と改善している要因として、2021年1Q(1-3月期)の決算発表とガイダンスが好調だったことが挙げられます。

 リフィニティブ(調査会社)が集計している決算発表動向によると、S&P500指数を構成する大手500社の第1Q決算は前年同期比50.4%増益で着地する見通しです。

 5月7日までに決算を発表した439社のうち、発表されたEPSが事前のアナリスト予想平均を上回った企業数の割合(ポジティブ・サプライズ)は87.2%と好調です。

 セクター(業種)別にみると、個人消費関連、金融、素材、IT(情報技術)、コミュニケーションサービスの増益幅が全体の業績好調に寄与しました。

 なお、リフィニティブが事前に集計している2021年第2Q(4-6月期)の決算も前年同期比61.2%の増益が見込まれています。

 業績見通しを無視して株価が下落する場面は多々ありますが、株式市場の行方が金利動向だけで決まるとも言えません。「株価は業績」との相場格言に注目するステージに移行する可能性があります。

 季節性の影響が濃い5月から6月にかけての株価下落は、相応の日柄整理を要する可能性があります。

 ただ、米国市場が業績改善を本格的に織り込む「業績相場」へ移行する過渡期的な現象とも言えそうです。株価が下落した局面では、「押し目買いや積み増し買いに分があり」との投資判断に変わりありません。

▼著者おすすめのバックナンバー
2021年5月7日:100円からできる!米国株投資:「セル・イン・メイ」と長期・分散・積立投資
2021年4月30日:株価の日米格差はなぜ?米国株はバイデン増税に要注意
2021年4月23日:米株高は小休止でも、S&P500過去最高益へ。強いセクターは?