今後、投資してみたい金融商品・国(地域)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲

 今回は、毎月実施している質問「今後、投資してみたい国(地域)」のうち、「アメリカ」と「日本」と答えたお客様の割合とその差に注目します。

 当該質問は複数回答可で、選択肢は、日本、アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、中国、ブラジル、ロシア、インド、東南アジア、中南米(ブラジル除く)、東欧、アフリカ、特になし、の13個です。

図:質問「今後、投資してみたい国(地域)」で、「アメリカ」と「日本」を選択したお客様の割合とその差(アメリカ-日本) 

出所:楽天DIのデータより楽天証券経済研究所作成

 上のグラフは、「アメリカ」および「日本」を選択したお客様の割合と、「アメリカ」から「日本」を引いた、日米金利差ならぬ、「日米投資指向差」を示しています。

 前回、2021年3月の調査結果についてのコメントで、「日米投資指向差」が、2019年ごろから、アメリカ優勢が続いていると述べました。今回、前回と同様、「日米投資指向差」に触れたのは、統計開始以来の最高となったためです。

 2021年4月の調査では、「アメリカ」と回答したお客様の割合は73.32%、「日本」は同31.21%、そして「日米投資指向差」は、これまで最高だった2020年2月の+33.39%を大きく上回る、+42.10%となりました。

「日米投資指向差」は、「アメリカ」と「日本」という2つの変数でできています。2つが真逆の方向に推移すると「差」が特に大きく拡大します。2021年4月は、「アメリカ」が過去最高を記録した一方で、「日本」は直近の低水準である2020年7月(33.5%)を下回りました。

 米国で財政・金融政策が推進する期待やワクチン接種が加速する期待が高まった一方、日本で新型コロナの変異株の感染拡大が目立ったことが、「日米投資指向差」が過去最高となった要因に挙げられると、筆者は考えています。

 しばしば、日本の税収と歳出の推移を説明する際に用いられる「ワニのくち」は、増加の一途をたどる「歳出」を上あごに、それと相反して低迷する「税収」を下あごに見立てた言葉です。「日米投資指向差」の根拠である「アメリカ」と「日本」も、まさに「ワニのくち」状態にあると言えます。

「日米投資指向差」において大きく開いた「ワニのくち」が、今後さらに大きく開くのか、はたまた閉じるのか、財政・金融政策や変異株の感染動向が、ポイントとなると考えられます。引き続き、この「日米投資指向差」に注目していきたいと思います。

表:今後、投資してみたい金融商品・2021年4月調査時点(複数回答)

投資対象 割合 前回比
国内株式 48.74% ▼ 7.48%
外国株式 46.36% △ 0.18%
投資信託 40.61% △ 4.15%
ETF 32.65% △ 1.46%
REIT 15.49% △ 1.20%
国内債券 3.90% ▼ 0.84%
海外債券 7.61% ▼ 0.26%
FX(外国為替証拠金取引) 7.20% ▼ 0.38%
金やプラチナ地金 15.60% ▼ 0.84%
原油先物取引 1.66% ▼ 0.95%
その他の商品先物取引 1.70% ▼ 0.05%
金先物取引 1.50% ▼ 0.32%
特になし 8.23% △ 0.91%
出所:楽天DIのデータより筆者作成

表:今後、投資してみたい国(地域)・2021年4月調査時点(複数回答)

国名 割合 前回比
日本 31.21% ▼ 7.46%
アメリカ 73.32% △ 7.20%
ユーロ圏 8.39% △ 1.28%
オセアニア 4.25% ▼ 0.22%
中国 19.99% △ 1.82%
ブラジル 2.36% ▼ 0.07%
ロシア 1.29% ▼ 0.01%
インド 23.09% ▼ 5.99%
東南アジア 15.62% ▼ 2.25%
中南米(ブラジル除く) 1.91% △ 0.21%
東欧 1.46% △ 0.05%
アフリカ 3.47% ▼ 0.24%
特になし 5.99% ▼ 0.28%
出所:楽天DIのデータより筆者作成