初心者で幸い
今回は、トウシルの「超・少額投資のススメ」特集に向けて、正しい投資行動の判断原則について書く。
さて、読者が真に「初心者」であるなら、それは幸いなことだ。なぜなら、誤った先入観をまだ持っていないからだ。やるべきことは、素直な心で基本原則を理解して、自分で判断し、行動することだけでいい。
投資の世界ではお金の損得が絡むし、結果には不確実性が伴う。お金は、もともと感情をざわつかせる媒体だし、人間は不確実性が伴う意思決定で間違えやすい生き物だ。(A)自分の選択への過信(「オーバーコンフィデンス」)、(B)意思決定の他人への依存(「後悔回避」から来る)、(C)勝ち負け(損得)への過剰なこだわり(「プロスペクト理論」の前提の一部だ)など、間違えやすい傾向と理由は行動経済学でも研究されている。
加えて、投資の世界には、一見正しそうに思える誤解が数多く存在する。専門家を名乗る人の本を読む際にも、油断はできない(本稿の内容にも油断しないで下さい!)。誤りの原因は、著者の単純な理解不足(案外少なくない)であることもあるし、投資に絡むビジネスの都合が反映している場合もある。
本稿では、最初から「やってはいけない投資!」のあれこれを列挙するのではなくて、投資にあって何が「正しいか」、「やってはいけないか」を理解するための「原則」をご説明する。以下の原則に照らして物事を判断して頂くと、何が「やってはいけない!」ことで、その理由がなぜなのかが分かるようになると思う。受験勉強に喩えると、問題集ではなくて基本書的な参考書の役割を目指す。
一般に、「魚を与えるよりも、魚の釣り方を教えることこそが真の親切だ」と言われる。筆者もその通りだと思う。以下の原則は、これで釣果が保証されるようなノウハウではないが、安全且つ効率的に魚釣りを楽しむための心構えだと思って欲しい。
【投資判断で重要な7原則】
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以下、それぞれの項目を説明する。
1. 損得計算に基づいて「自分で」決める。相手がプロでも「任せる」のは絶対にダメだ。
投資に限らず、経済的な意思決定は「自分で納得して」行うのが大原則だ。投資にあっては動かす金額と損得への影響が大きいし、運用ビジネス側(運用会社、販売金融機関、アドバイザーなど)は顧客からより多くの利益を獲得するチャンスを狙っている。投資家と運用ビジネスとは利害が一致していない。「プロを信じる」アプローチは有効に機能しない。
その代わり、自分で損得勘定が納得できない運用商品・案件は「全て」見送って構わない。「いいかもしれない商品やチャンス」を知らなくても、自分の損になる可能性は極めて小さいからだ。「うまそうな話」が本当の儲け話である現実的可能性は限りなくゼロに近いので、安心して欲しい。
「マーケット」にあっては、例えば株式市場なら、「いい会社には高い株価が付き、ダメな会社は安い株価になる」ような、力学が強く働いている。どの銘柄に投資することがより儲かるのかを判断することは至難の業だ。従って、確実に儲かる「見送ると、もったいない」チャンスなど殆ど存在しないのが現実なのだ。
加えて、万が一特別なチャンスが存在しても、ビジネスを行う側が、それを自分で利用せずにあなたに教えることなどあるはずがないではないか。
投資は、自分で考えて納得できること「だけ」で判断するといい。投資の世界では、自分に分からないことで儲けようとするのは、チャンスよりも、危険の方が大きい。
因みに、筆者は「世の中で最低の運用商品・サービスは何ですか?」と訊かれた場合に、間髪入れずに「ラップです」と答える。
対面営業の証券会社のラップは、サービス自体の手数料が高いし、運用の内容にも投信を組み入れる「ファンド・ラップ」なので運用管理費用の高いファンドが組み入れられる傾向があるなど、顧客にとって極めて「儲かりにくい」サービスだ。
また、運用の内容を他人に委ねること自体が心構えとしてとして極めて不適切だ。