2.同類の投資対象にあっては実質的な手数料がより高いものを避ける。実質的な手数料が「分からない場合」のものも無条件に避ける。

 株式市場をはじめとする資本市場、いわゆる「マーケット」はよくできた仕組みだ。誰かが、コンスタントに他人よりも儲け続けることは極めて難しい。

 投資信託をはじめとする運用商品は、「マーケット」から株式、債券、外国為替、といった素材を調達してパッケージングし、手数料を取って投資家に提供している。

 たとえば「日本株の投資信託」といった中身が似た商品にあっては、「無条件のマイナスリターン」である手数料がより大きな商品が、手数料の小さな商品に勝る確率は小さいと判断することが妥当だ。

 金融機関や運用会社は説明したがらないが、手数料の差が投資家の得る期待リターンに及ぼす影響は極めて大きい。商品間の「優劣」は手数料差で決定できるものが殆どだ。

 例えば、運用管理費用(信託報酬)が年率1%の投信と0.2%の投信が共に日本株に投資する投信であった場合に、前者に投資する方が意思決定として正しい可能性はほぼ無いと考えていい。「手数料は高いけれども、運用が上手い投信」を見つけることができる人はプロにもいない。ギャンブルにあっての「テラ銭」(胴元=主催者の取り分)と全く同じくらい、投資にあって手数料は重要なのだ。

 投信は幸い手数料が開示されているが、生命保険や仕組み債のように投資家に対して実質的な手数料をオープンにしていない運用商品に対してはどうしたらいいのか。

「実質的な手数料が分からない」ということの意味は、「リスクとリターン」のリターンに関して正確な情報を持っていないということだ。本来、期待リターンが分からないものを買えるはずがない。実質的な手数料が自分で正確に分からない運用商品は「全て」購入を見送って構わない。

3.自分に商品を売ることで利益を得る可能性がある相手のアドバイスを聞かない。

 銀行・証券会社・生命保険会社など業態を問わず、対面の窓口に資産運用について「相談」に行くのは止めた方がいい。仮に「無料相談」と謳っていても、先方は相談に応じた時間と手間のコストを、商品販売の利益が上回るのでないとビジネスが成立しない立場だ。近づかない方がいい。

 それでも、誰かに相談したい場合は、例えばFP(ファイナンシャル・プランナー)のような相手があり得るが、FPでも生命保険を紹介した場合に保険会社から報酬(保険料の数カ月分であることが多く、かなり大きい)を受け取るような仕組みを持っている場合が少なくなくて、実質的に保険のセールスマンと変わらない利害を持っている場合がある。

「あなたに商品を売ることで利益を得る可能性がある人に、運用を相談しない方がいい」というのが大原則だ。

 FPに相談する場合は、生命保険などの商品販売に一切関わっていない人を選び、相談料をきちんと払う方がいい。正しいアドバイスの価値は相談料の何倍にもなることが珍しくない。他方、生命保険の実質的な手数料は逆に相談料の何倍もの損になることがある。

4.銘柄選択・投資のタイミングに関して、平均的他人に勝る判断力は自分にもプロにも無いことを前提として物事を考える。

 どの商品(たとえば株式の銘柄や投資信託)に投資したらいいのか、或いは、今は投資に適したタイミングなのか。何れも、投資家が強い関心を持つテーマだが、プロも含めて、これらについて確実に「平均的他人」以上に正しい答えを返すことができる人はいないのが現実だ。

 相場の動向や銘柄選択について意見を持つことは誰でもできる。意見を上手に言うことはプロならできる。そして、確信があるかのごとくに意見を言うことは練達のプロならできる。しかし、何れの意見にも投資リターンの改善のためには意味は無い。聞くだけ無駄なのだ。

「市場平均よりも儲かる株式の銘柄」とか「同類の他のファンドよりも良いアクティブ・ファンド」を選ぶことができるかのように振る舞う人は、プロ・アマを問わず「怪しい」と思うべきだ。

 一方、少し考えてみると分かるように、例えば手数料の高いアクティブ・ファンドを買って欲しいと願う金融機関のセールスマンは、相対的に良いアクティブ・ファンドが自分たちに判別可能であるかのように語る「職業的嘘つき」になる必要がある。自分で効果的な嘘を思いつかない場合は、投信評価会社のファンド・レーティングのような既製品の「嘘の材料」を使うこともある。こうした人たちには、目くじらを立てて怒るよりは、彼らのビジネス上の立場を理解して、「お勧め」を無視したらいいし、彼らから遠ざかるともっといい。

 タイミングについても同様だ。たとえば、プロの世界では、はっきり言って、チャート分析には将来の予測力が全く認められていない。つまり、売買のタイミングの判断には全く無駄なのだから、チャート分析には凝らない方がいい。

 また、詳しくは別の機会に譲るが、エコノミストの経済予測を元に投資戦略を考えることも絶望的なくらい上手く行かない。例えば、運用会社が、経済見通しから投資戦略を語るのは、「そうすると様になるから」というビジネス上の理由に過ぎない。