祭りのはじまりは2020年11月だった。この半年で400%超上昇した銘柄も

 先述の「お祭り騒ぎ」の様相を呈している17銘柄について、2020年5月7日を100として、この1年間の値動きを振り返ります。

図:暗号資産(仮想通貨)の価格推移 ※2020年5月7日を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 先週、史上最高値をつけたり同高値水準を維持したりした暗号資産(仮想通貨)ですが、この1年間を振り返ると、特に、昨年11月ごろから、騰勢を強めたことがわかります。3つのうち最も上昇が目立ったイーサリアムは、11月比(このおよそ半年間で)、価格が8倍になりました。

図:木材、ロジウム、イリジウム、炭素排出権、鉄鉱石の価格推移 ※2020年5月7日を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 上記は、木材、ロジウム、イリジウム、炭素排出権、鉄鉱石の価格推移です。これらも、暗号資産(仮想通貨)と同様、昨年11月ごろから、騰勢を強めたことがわかります。木材は、11月比(このおよそ半年間で)、価格が3倍になりました。

図:植物油の価格推移 ※2020年5月7日を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 植物油ですが、昨年夏前から、主要穀物生産国の天候不順など、植物油固有の上昇要因があったため、この1年間は上昇続きでしたが、それでも、暗号資産(仮想通貨)や木材、ロジウム、イリジウム、炭素排出権、鉄鉱石と同様、昨年11月ごろから、騰勢をさらに強めたことがわかります。この中で最も上昇が目立った大豆油は、11月比(このおよそ半年間で)、価格が2倍になりました。

図:銅、パラジウム、主要株価指数の価格推移 ※2020年5月7日を100として指数化

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 銅、パラジウム、主要株価指数についても、これまで述べた11銘柄と同様、昨年11月ごろから、騰勢を強めたことがわかります。この中で最も上昇が目立った銅は、11月比(このおよそ半年間で)、価格が1.5倍になりました。

 先週、史上最高値をつけたり同水準を維持したりした銘柄のほとんどが、昨年11月ごろから、騰勢を強めたわけです。このタイミングは、各種市場や市場全体にとって、どのようなタイミングだったのでしょうか?

「期待先行相場」は、期待の対象を入れ替えながら膨張している

「2020年11月ごろ」というタイミングは、各種市場や市場全体にとって、「期待先行相場」が始まったタイミングだったと、筆者は考えています。ここでいう「期待先行相場」とは、実態はさほど伴っていなくても、先々の期待を織り込んで、上昇する(上昇してしまう)相場のことです。

 以前の「“バイデン・ワクチン相場”で見えた、金(ゴールド)と原油の実力」で書いた、横暴な旧政権が倒れて秩序を取り戻してくれそうな新政権が発足することや、有効性が高いワクチン開発が成功して新型コロナの脅威を排除できる期待が増幅したことで生じた、「バイデン・ワクチン相場」がまさに「期待先行相場」の一例です。

 この「バイデン・ワクチン相場」がはじまったのが2020年11月だったことから(バイデン氏の米大統領選挙の勝利宣言が11月7日、ファイザー社とビオンテック社がワクチンの有効性を公表したのが11月9日)、脱炭素が進むことが想定され、急落すると目された原油相場をも上昇させた「バイデン・ワクチン相場」が、その半年後(2021年5月)に「史上最高値祭り」を起こす一歩目の「期待先行相場」となったと考えられます。

 そしてその後、米中間で人権問題が噴出したり、変異株が急拡大したりしたため、「バイデン・ワクチン相場」の賞味期限が切れそうになるも、また新しい「期待先行相場」が芽吹き、各種市場や市場全体に「期待」を振りまき、これらを価格上昇へと導いていると、考えられます。筆者が考える、2020年11月以降の期待の対象の変遷は、以下のとおりです。

図:「期待先行相場」(良いところ取り)相場 の変遷

出所:筆者作成

 新型コロナの感染者が増加し続けている先進国よりも感染拡大を一定程度封じ込めている中国や、変異株の感染が拡大していることよりもワクチンの流通が拡大していることに注目し、半導体不足や世界的な交通の要衝などでの供給段階での障害、コモディティ(商品)相場の価格上昇を需要があることの証ととらえ、EV(電気自動車)などの環境関連需要が世界的に増加することに強い期待を抱く。

 市場は、さまざまな分野で「良いところ取り」をし、盲目的に「期待」を膨らませ、「期待先行相場」を作り上げているように見えます。そして、その「期待先行相場」に乗って、各種市場で「史上最高値祭り」が開催されていると、筆者は考えています。